沖縄に梅雨の訪れを告げるゲットウ。沖縄では旧暦12月8日の「ムーチーの日」に、ゲットウの葉で包んだ餅を食べ、厄払いや健康、長寿を願います。ゲットウはショウガの仲間で、葉はとても良い香りがします。葉から取られた成分はアロマオイルとして使われたり、化粧品に利用されたりします。また、繊維が丈夫なのでバッグや布を作ったりもできます。皆さんの周りに、咲いていないか探してみましょう。
(2019年06月16日付 りゅうPON!掲載)
(写真・監修 琉球大学理学部教授 傳田哲郎さん)
分類:ショウガ目ショウガ科
学名:Alpinia zerumbet (Pers.) B.L.Burtt et R.M.Sm.
和名:ゲットウ 方言名:サンニン(沖縄本島)、サミン(八重山地域)
特徴:沖縄ではあちこちで見られます。沖縄本島では5~7月が開花シーズンで、6月上旬がピークです。花は、早朝に開き夜中にしぼんでしまう、一日花です。秋には赤い実を付けます。
<まめ知識>不思議!びっくり!ゲットウの受粉
ゲットウは、めしべとおしべの役割が時間帯で異なる面白い植物です。午前中に花粉を出す「雄性先熟型」と、午後に花粉を出す「雌性先熟型」の2種類があります。どちらの花を持つかは個体ごとに決まっています。
花粉が出ている時、おしべの先端にあるめしべは上を向いています。一方、花粉がなくなると、めしべが動いて下向きになります。めしべの上下の向きは、花粉を付けた昆虫が花の中に入ってきた時、受粉できるかどうかを左右する重要なポイントです。
ハチなどの昆虫はゲットウの蜜が大好きです。蜜を吸う時に花粉が背中に付いた昆虫が、別の花に移動してめしべに触れると受粉します。
つまり、午前中は花粉を出している雄性先熟型からめしべが下を向いている雌性先熟型に、午後はその逆方向に昆虫が移動することで受粉ができます。
同じ型の花の個体との交配を避け、遺伝的な多様性を保つ仕組みです。
ゲットウを見つけたらハチになったつもりで、花を観察してみてください。面白い発見があるかもしれません。
(写真提供、傳田哲郎さん)