【深掘り】タクシー乗務員が激減 コロナ下の離職が戻らず4年で半減 乗客需要が回復も供給追い付かず


この記事を書いた人 琉球新報社
観光需要が回復し、観光客であふれる那覇空港。タクシー停留所は長蛇の列ができていた=23日、同空港

 県内タクシー乗務員の減少が止まらない。2009年の1万41人をピークに、2021年は約半数の5246人に減り、22年にはさらに半減する勢いだ。コロナ禍から観光需要が回復し、県内消費も活発化する中、人手が戻らず配車が追い付かないなど需給のひっ迫が起きている。各社とも需要に応えようと、限られた人員の勤務シフトを工夫するなどして観光の下支えに力を入れている。

 乗務員不足はコロナ禍が拍車を掛けた。収入面の不安に加え、年配者を中心に健康を気遣い離職が相次いだ。2022年度の入域観光客数は前年度比約2.07倍の677万4600人と大幅に増加するなど、コロナ禍の制限が緩和され人流が活発化しているが、タクシー業界の関係者は「長いコロナ期間が意欲の低下を招き、復職の割合が大きく減っている」と吐露した。

 県ハイヤー・タクシー協会によると、県内法人タクシーの保有台数は3千台後半で推移しているが、利用者に対し、乗務員不足から稼働率が上がらず供給が追い付いていないのが現状という。

 一方で需要の取り込みには成功している。同協会の津波古修事務局長は、観光や消費の回復で収入面が大きく改善しているとし「月50万円を売り上げるドライバーも出てきた。コロナ禍は確かに厳しかったが、観光が戻ってきた今、若い人にとっても魅力のある職業だと思っている」と強調した。

 若手の人材確保や育成で課題解決を図っている。昨年、早くて19歳から乗務員になれるよう関連法が改正され、同協会はテレビCMを打ち出すなど積極的に人材確保に乗り出している。各社とも入社してから免許取得を支援する制度を充実させ、長時間労働の改善に力を入れているという。

 同協会の東江一成会長は「10年の経験があれば、個人タクシー事業者の資格が取れる。タクシー業務と並行して別の仕事もできる。選択肢が広がる職業。県内観光業の力にもなる」と魅力を語った。
 (謝花史哲)