「学友が目の前に現れるよう」ひめゆり211人の名前を“紙碑”に 絵本「ヤギと少年」朗読イベント


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池澤夏樹さん(後列左から2人目)と黒田征太郎さん(前列左端)が手掛けた絵本のイベントに訪れたひめゆり同窓会の翁長安子さん(同左から3人目)ら。宮城さつきさん(同右端)、喜納吏一さん(後列左端)、キヨサクさん(同右から2人目)が朗読やライブをした=日、那覇市のひめゆりピースホール

 ひめゆり学徒隊などを題材に沖縄戦を描いた絵本「ヤギと少年、洞窟の中へ」を刊行した作家の池澤夏樹さん(77)、画家の黒田征太郎さん(84)のトークや朗読のイベントが23日、那覇市のひめゆりピースホールで催された。絵本には、沖縄戦で亡くなった沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒211人の名前が「紙碑」として掲載されている。ひめゆり同窓生たちもイベントを訪れ、翁長安子さん(93)は「学友の名前が読み上げられるのを聞いて、目の前に現れるようだった。みんなで戦を阻止しよう」と会場の人々に語り掛けた。

 宮城さつきさんが朗読し、喜納吏一さんが三線の伴奏をした。キヨサクさんのライブもあった。黒田さんは花の絵を描き、ひめゆり同窓生たちに贈った。

 絵本は沖縄戦の3年後、ガマに入った少年が女子学徒の霊と出会うという物語。池澤さんと黒田さんは創作に当たり南城市の糸数アブチラガマを訪れた。

 黒田さんはガマで「何でものみ込む不気味さ」を感じ、絵本で闇の世界を表現した。「沖縄の人々は僕らには分からない大変な体験をした」と沖縄戦を描く難しさに言及しつつ、今後も描き続ける意欲を示した。

 池澤さんは資料で五十音順だった生徒たちの名簿を亡くなった日の順に変え、「写経に近い気持ち」で記していったという。「亡くなった日の順にすることで戦争の経緯やリアリティーが伝わる。『解散命令』が出た後、急に死者が増えることを読み取ってほしい」と話した。
  (伊佐尚記)