高校生失明で警官を起訴 「過失」への変更に被害男性「納得できない」 客観的証拠が乏しく判断に難しさも


この記事を書いた人 琉球新報社
バイクの高校生(当時)と被告が接触した路地=29日、沖縄市

2022年1月にバイクに乗っていた当時高校生だった男性(18)が、警棒を持つ警察官と接触して右目失明の大けがを負った事件。那覇地検は29日、巡査(31)を業務上過失傷害の罪で起訴した。地検への書類送致容疑となった特別公務員暴行陵虐致傷罪よりも量刑が軽い罪での起訴に被害男性側からは不満の声が漏れた。一方で、客観的証拠が乏しい中での巡査の行動をどう評価するか。その難しさも浮き彫りになった。全国的にも注目された沖縄署の襲撃騒動のきっかけとなった事件は、法廷に舞台を移す。

沖縄署で勤務していた巡査を業務上過失傷害の罪で起訴した那覇地検の判断について、被害男性らは弁護士を通じて「納得できない」とコメントし、公判への被害者参加や民事訴訟などを通じて「真実を明らかにしていく」とした。従来通り、「物陰から突然飛び出してきた加害警察官に警棒で殴られた」との認識を示し、「けがも重傷で相当強い力で殴られたことは明らか」だとも訴え、巡査の行為を「過失」と判断した地検の判断に疑問を呈した。

両者の証言の食い違いや現場の防犯カメラ映像や目撃証言がない状況を踏まえ、被害者側は「客観的証拠から最低限認定できる事実のみに基づいて慎重な判断をしたものと受け止める」と地検の判断背景を推測しつつも、「これが真実であるとは考えられない」とした。

那覇地検の初又且敏次席検事は29日の記者会見で「警察官としてのルールが守られていなかった。守るべきことを守っていればこの事件は起こらなかった。過失は重い」と所見を述べ、業務上過失傷害罪での起訴となったことについては「(巡査の)『故意』が認められなかったから過失というようなことではなく、慎重に要件を検討した結果だ」と強調した。

県警の知念克幸首席監察官は「起訴およびこれまでの捜査結果を踏まえて厳正に対処するとともに、再発防止の取り組みを徹底する」とのコメントを出した。県警監察課は、単独ではなく複数人連携で交通取り締まりに当たることなどを徹底し、再発防止に努めるとしている。

巡査の弁護人は琉球新報の取材に対し「特段話すことはない」として言及を避けた。一方、沖縄署は起訴を受け、29日夜から庁舎周辺で警戒態勢を敷いた。