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【識者談話】故意の立証に証拠足りず 高校生失明事件 中野正剛氏(沖縄国際大教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年1月にバイクに乗っていた当時高校生だった男性(18)が、警棒を持つ警察官と接触して右目失明の大けがを負った事件。那覇地検は29日、巡査(31)を業務上過失傷害の罪で起訴した。地検への書類送致容疑となった特別公務員暴行陵虐致傷罪よりも量刑が軽い罪での起訴となった。その背景には何があったのか。識者に聞いた。


 那覇地検の起訴は、恐らく現場の状況を明らかにするものがなかった以上、立証方針として証拠が足りず重く処罰できる方針は取り得ず、巡査の不注意でけがを負わせたという業務上過失傷害罪に落ち着いたと思う。検察側は証拠がそろわない以上、こうした判断もやむを得ないと思う。県警が特別公務員暴行陵虐致傷容疑で書類送検したのは、警察の不祥事として極めて重大な結果を生じさせたという認識の現れで、組織として自戒の念の表れと言えた。強気の認定だった。

 検察は警察と違い、有罪が十分見込める事件と考える場合しか起訴しない。故意の立証には過失とは違い、現場の状況、とりわけ目撃者の存在、警棒で執拗(しつよう)に被害者を殴打しているかなど、客観証拠に基づいて故意を立証していく。収集された証拠だけでは、暴行の故意が立証できないと判断したのだろう。警察とは立場の相違が反映した形だ。

(刑事法)