映画「ウムイ 芸能の村」ダニエル・ロペス監督に聞く 沖縄の伝統つなぐ思い描く 桜坂劇場で8日から


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映画「ウムイ 芸能の村」について語るダニエル・ロペス監督=4日、琉球新報社

 沖縄県宜野座村を舞台に伝統芸能の継承を描いたドキュメンタリー映画「ウムイ 芸能の村」の上映が8日、那覇市の桜坂劇場で始まる。作品は、伝統芸能を継承する人たちの姿や語りでつないだ。スイス出身のダニエル・ロペス監督は「沖縄では伝統芸能が生活の中にある。人々の思いで継承されている」と語った。

 伝統芸能が盛んな宜野座村だが、コロナ禍では公演の中止や延期が相次いだ。伝統芸能の継承に危機感を持った村文化センターがらまんホールの小越友也さんがエグゼクティブプロデューサーとして携わり、同ホール企画で製作した。

 琉球舞踊、沖縄三線、琉球横笛、獅子舞、島太鼓、エイサーといった沖縄芸能に関わる9人とその家族らが映画に登場する。ナレーションはなく、9人それぞれの語りでストーリーが紡がれる。ロペス監督は「芸能への率直な思いを聞くため」と、カメラを入れずに話した際の音源を映像に重ねた。視聴者に想像する余白を与えるため、説明調を避けた。

映画「ウムイ 芸能の村」から (C)VIVA RYUKYU

 ロペス監督は撮影を通して後継者不足に悩む声を多く聞き、「沖縄の伝統はどうなるのか、という心配もある」と語る。「先祖から受け継いだ基本を忘れずに、伝統と創作の両方を進めることが大事かもしれない」と指摘した。

 映画は、昨年の東京ドキュメンタリー映画祭人類学・民俗映像部門でグランプリ(宮本馨太郎賞)を受賞。6月にドイツの映画祭で上映され、舞台も披露した。ドイツのスタッフからは「伝統がどう守られ、最終的に作品になるのか興味を持った」との感想も。ロペス監督は「公演後、ドイツのスタッフが、沖縄のスタッフがするように獅子舞に拝む姿に感動した」と海外への広がりを喜んだ。

 ドキュメンタリーだが、問題提起を強調せず淡々と描いた。ロペス監督は「沖縄の音楽は癒やしの部分が大きい。この映画で癒やされて、沖縄の大事な伝統芸能を守ってほしい」と思いを込めた。

 (田吹遥子)

 

映画「ウムイ 芸能の村」から (C)VIVA RYUKYU