銃撃事件から1年の節目で実施した琉球新報アンケートでは、回答した議員全員が教団との関わりを否定した。一方、教団側にも自民党とのつながりが指摘された関連政治団体「国際勝共連合」の県本部を県内の教団拠点から移転させるなど、事件の影響を感じさせる動きがあった。本紙取材に応じた団体関係者からは、6月施行のLGBTなど性的少数者への理解増進法など岸田文雄政権が進める政策への不満も漏れた。事件を契機に露呈した「政治と宗教」の問題は、両者の関係に微妙な変化ももたらしている。
「前代表から個人的にお願いされて引き受けた」。昨年9月から国際勝共連合沖縄県本部の代表を務める男性は7日、本紙の電話取材に代表交代と本部移転の経緯をこう説明した。
県選挙管理委員会に提出された資料によると、昨年9月15日、教団の関連政治団体「国際勝共連合」の県本部の所在地が、旧統一教会の沖縄拠点「世界平和統一家庭連合那覇家庭教会」(那覇市)から、沖縄市のマンションに移転。代表交代も同時期に行われた。
勝共連合のホームページなどによると、同団体は1968年に教団の創始者、文鮮明氏が提唱して反共団体として発足。勝共連合を率いた日本統一教会初代会長の故久保木修己氏の著書によると、安倍氏の祖父、岸信介元首相も発起人に名を連ねたという。安倍氏の銃撃事件以降、旧統一教会の関連政治団体として注目され、設立の経緯や、改憲推進など自民党の政策と通じる政治運動を展開していた点などから、教団の政治介入の可能性が指摘された。
県本部の現代表は、本部移転などへの事件の影響について明言を避けたが、同じく電話取材に応じた前代表は「影響を避けるという意味合いもあったのか」との質問を否定せず、「(事件による)混乱はあった」と明かした。自身も教団信者であるとする前代表からは、事件以降に吹き荒れた教団への逆風に「バッシングが始まったことに関しては、ふに落ちない部分がある」と不満も。
現代表の男性は、勝共連合が、教団の教義とも通じる運動方針に「同性婚反対」などの主張を掲げていることを踏まえ、「自民党が日本をおかしくする勢力に取り込まれているように感じる。まずいと思う」などと岸田政権が進めるLGBT政策を批判した。その口ぶりは、事件によって遠ざかった政権との距離感を感じさせた。
(安里洋輔)