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プロが伝える「社会科新聞」作りのコツ


プロが伝える「社会科新聞」作りのコツ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 夏休みの宿題で学校新聞や社会科新聞に取り組む小中学生も多いと思います。でも新聞ってどうやって作ったらいいんだろう? 自分の思いが伝えられる新聞ってどんなもの?

 琉球新報で紙面レイアウトを専門に行う新聞作りのプロ・高良利香さんが、中学生の社会科新聞の定型用紙を使って説明します。

りゅうちゃん(左)と利香さん(右)

高良利香(たから・りか)さん

琉球新報社統合編集局編成センター編成グループ副グループ長。記者が書いた記事の価値判断をしたり見出しをつけたりする仕事をしているよ。カキとピーという猫2匹を飼っている動物好き。

2022年度の優秀作品を見てみよう

2022年度優秀作品(小学生の部)
2022年度優秀作品(中学生の部)

 こちらは2022年度、中学校社会科新聞コンクールと小学生向けの学校新聞コンクールの入賞作品です。どれもパッと見て伝えたいことがはっきりと分かります。字が丁寧で見やすく、きれいに仕上げています。戦争、日本復帰、平和など、テーマは大きくて幅広いですが、伝えたいことをうまくフォーカスしているところがいいですね。

 中学生は内容は社会科限定、レイアウトは定型ですが、小学生は内容・レイアウトともに自由です。自分の興味のあることを取り上げ、大胆で目を引くレイアウトをするなど工夫されています。イラストや写真を効果的に使い、メリハリある紙面になっているところが素晴らしいですね。

 小中学生に共通して言えることは、自ら取材をしたり現場に足を運んだりした新聞は説得力があるということ。本やインターネットを調べるだけでなく、生の声や現場の様子を盛り込むといいでしょう。

テーマを決めよう!

2022年度優秀作品(中学生の部)

 「新聞」なので、読み手に伝えたいことが届かなくてはなりません。中学生の新聞はレイアウトが決まっているので中身で勝負です。平和や戦争、琉球文化など大枠で同じテーマでも切り口や何に焦点を当てるかによって大きく変わります。

 例えばこちらの作品は戦争をテーマにしていますが、祖父の戦争体験と戦後の体験、そして戦禍から逃れてきたウクライナからの避難者に話を聞いています。生の声を入れることでよりリアルに伝わり、いくつかの視点を入れることでより多面的な内容となります。

新聞の「わりつけ」からアドバイス★

「わりつけ」の説明

ここからは具体的に中学校社会科新聞の定型用紙の「わりつけ例」に沿って説明していきます。
※タイトルをクリックすると各項目に移動します

1 題字
2 横大見出し
3 見出し(メイン記事)
4 見出し(タタミ記事)
5 見出し(二番手記事)
6 編集後記
7 カコミ
8 写真
★ 仕上げ

1.題字

 ここには自分の新聞の名前を書きます。テーマに沿ったもの、自分の名前、地域の名前、何でもいいでしょう。

2.横大見出し

 ここにはこの新聞で伝えたいことを一言で表しましょう。ここを見たらどのような内容の新聞か伝わるようなキーワードを盛り込みます。

 読んでみたくなるようなパワーワード、引きつける言葉が入れられるといいですね。一般的な新聞の見出しは10文字前後です。長々と書くと、見出しではなく文章になってしまいます。できるだけコンパクトに、でも伝わる見出しを考えてください。

3.見出し(メイン記事)

 ここは新聞でいういわゆる「本記」にあたる部分です。そのテーマの主題や概要を分かりやすく説明する場所です。その際、5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を意識して書くようにすると書き漏らしがないでしょう。

4.見出し(タタミ記事)

 ここは新聞では「サイド」と呼ばれる部分に当たります。「本記」をより詳しく説明したり、別の視点から取材したりしたことを書くのがおすすめです。

 本記は概要を書くのでどうしても事実を淡々と述べるだけになってしまいがちです。なので「サイド」でオリジナリティーを出しましょう。入賞作品を見ると、インタビューや現場を見に行った体験談を入れている人が多いですね。そのような経験者の声や自分の生の体験を入れると深みのある新聞になります。

5.見出し(二番手記事)

 ここも「サイド」に当たります。本記を補完したり、本記の中の1つの項目に焦点を当てたりするような使い方がいいでしょう。例えば、地域をテーマとしたなら、これからどのようになってほしいかとか、課題解決案を書くのもいいですね。自分はどうしたいのか、自分ができることは何なのかを書くといいでしょう。

6.編集後記

 一般的な新聞にはありませんが、新聞作りを通して学んだこと、見えてきた課題、今後取り組みたいことなどを書くといいでしょう。学んだことを言葉にして次につなげられるといいですね。

7.カコミ

 新聞にもカコミ記事と呼ばれる記事があります。記事自体を罫線で囲んだり記事を横書きにしたりして、紙面にメリハリをつける役割があります。ここでは表やグラフ、写真を使って、視覚的に新聞の内容を補足する使い方がおすすめです。パッと目に入るよう、グラフの書き方も工夫しましょう。資料を使うときには参考資料を明記するのを忘れずに。いくつかの資料を組み合わせてもいいですね。

8.写真

 本記とタタミ記事に1枚ずつ写真を入れることになっています。せっかくなので自分で撮った写真を使うのがおすすめです。写真の形が縦長になっているので、縦に切ることを想定して撮るといいでしょう。

仕上げ

 新聞はいろんな人が目にするもの。読みやすくなくてはなりません。なので丁寧な字で書くことが大切です。見づらくなるので、記事の部分に色をつけたり絵を描いたりするのはオススメできません。その分、記事と記事を区切る罫線やカコミの罫、見出しは色を使ったり絵を描いたり文字を工夫したりしてオリジナリティーを出しましょう。文字が浮き上がって見えるように影を入れたり、テーマに合った文字を使うと、かっこいいと思います。

利香さんからのメッセージ

 新聞作りでは、課題やテーマを設定し、調べものをする、人に話を聞くなどして集めた情報を記事にまとめ、整理して、見出しをつけて、みんなに分かりやすく伝えます。その一連の作業はきっと将来にも役立つものになるでしょう。皆さんも、自分なりのテーマを見つけて新聞を作り、みんなに発信してみましょう!