交わす言葉のぬくもり 磯崎主佳(美術教師・絵本作家)<未来へいっぽにほ>


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磯崎 主佳(美術教師・絵本作家)

 6月23日の朝は、今年も白梅之塔慰霊祭準備から始まりました。元白梅学徒隊の中山きくさんが今年1月に亡くなり、私にとってはきくさんのいない初めての慰霊祭でした。それでも、つえをつきながら訪れてくださる体験者の方々と「今年もここで会えましたね」と言葉を交わせることが、どれほどありがたいことか実感し、感謝した一日でした。

 「私たちがいなくなった後も慰霊祭を続けて、白梅学徒隊のことを語り継いでほしい」。4年ほど前、中山きくさんから連絡を受けてホテルに集まった数名は、きくさんの願いにその場で「やります」と応えました。皆、戦跡ガイド、沖縄戦研究者、教員、雑誌編集など、自身の活動を通じて白梅学徒隊の体験を伝えてきた人達でした。名前は知っているものの、会うのは初めてという人もいました。

 私は絵本「白梅学徒隊きくさんの沖縄戦」を描いたことで声がかかりましたが、集められた顔ぶれから、きくさんに行動力と実動を望まれていることを強く感じました。白梅同窓会より若い「若梅会」がこの日から始まったのです。

  「白梅之塔を皆であたためてほしいの」。若梅会のいのうえちずさんが、きくさんから言われたという「あたためてほしい」という言葉には、手を取り合うような人肌のぬくもりと、深い思いやりを感じました。

 慰霊祭の日、体験者や遺族は学徒たちの遺影を見つめ、触れながらしみじみと語っていました。故人を思いながらここで言葉を交わすことは、故人を慰めると同時に、生きている私たちの心を温めているのだと気付かされます。故人がつないでくれた場所で交わす言葉のぬくもり、大切にしたいです。