金武町屋嘉の島本弘保さん(81)のパイン畑でこのほど、糖度25度超のボゴールパイン(スナックパイン)が収穫された。同種のパインの糖度は、おおむね18度前後と言われている。一口ほおばると、島本さん自身も「甘い」と目尻を下げる。生産量は少なく市場には出回らないため、文字通りの幻のパイン。「納得の出来。糖度日本一のパインではないか」と誇らしげだ。
「スーパーボゴール25」と名付けられた島本さんのパインは、実が大ぶりで包丁を入れれば黄色の果肉から蜜がしたたる。酸味も程よく、甘みとのバランスがとれた至極のうまさだ。
就職のため地元金武町を20歳で離れた島本さんは、60歳で帰郷し農業を始めた。約13年前からパイン生産に取り組み「人に負けない物を作りたい」と試行錯誤を重ねてきた。細菌を用いた土壌改良材の「バイオパワー」で土作りを行い、パイン生産に適した数種のアミノ酸が入った養液を葉面散布するなど丹精込めて育て上げた。「農家の知人に糖度25度だと伝えたが、誰も信用しない。『砂糖でも入れたのか』と言われた」と笑う。
パインは3千本の苗から3年がかりで収穫。金武町のふるさと納税返礼品の一部として扱われるほかは、知人らに配るという。
島本さんは「地元の金武町が東村産や西表島産のパインに並ぶパインの名産地になるよう盛り上げたい。付加価値を持つ世界一のパインを生産したい」と「甘美」な期待を膨らませた。
(高辻浩之)