「女性がいれたお茶はおいしい」「保育園にお迎えに来る男性は良い父親」―。日常生活にひそむアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)について理解を深めようと、おきなわ女性財団は30周年記念イベントとして6月24日に男女共同参画講座を開いた。23~29日の男女共同参画週間の一環。参加者の体験などを基に社会起業家でうなぁ沖縄代表の玉城直美さんと芸人でユーチューバーのせやろがいおじさんこと榎森耕助さんが対談した。
冒頭で玉城さんのミニ講話があった。アンコンシャス・バイアスとは、自分でも気付かないまま心の中に持っている偏った見方のこと。根拠のない思い込みや先入観、固定観念など「多くは自分が見聞きしたことでつくられている」と説明した。
「ジェンダー平等」は、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール5に位置づけられている。日本のSDGsランキングは166カ国中21位だった。日本では管理職比率や国会議員の数に男女比率に偏りがあるため、ゴール5のジェンダー平等が足を引っ張った。
また、世界経済フォーラムの2023年ジェンダーギャップ指数は、146カ国中125位にとどまる。その背景には「男性は~」「女性は~」など性別による偏った思い込みがあるとし、「新しい持続可能な社会に向けてみんなで考えていきたい」と話した。
発明家と言えば?
玉城さんが参加者に向けて「発明家と聞いて思い浮かべる人は?」と投げかけると、エジソンやライト兄弟などの名前が上がった。玉城さんは女性の発明家の名前を挙げる米国のウェブCMを紹介。「有名な人の名前を挙げようという時には男性に偏ることがある。これにも(発明家=男性という)アンコンシャス・バイアスが関係している」と指摘した。
トークセッションでは、参加者から寄せられた事例を基に玉城さんと榎森さんがコメントしていった。「女性がいれたお茶がおいしい」といわれることについて、榎森さんは「誰が入れても同じなはずなのに不思議。科学的根拠はないのでは」とツッコミを入れた。
玉城さんは「女性が細かいことや微妙な変化に気付くからと思っている」と背景にあるアンコンシャス・バイアスを指摘。これに対し、榎森さんは「良かれと思ってほめるつもりで言っていると思うから反発も大きい。指摘するのが難しい」と話した。
ほめられポイント
「保育園に迎えに来る男性が良い父親と思ってしまう」という事例もあった。玉城さんは国際協力の仕事や大学教員として働きながら子育てをしていたが、自身の子育てを振り返り「迎えの時間に間に合わないことが多く、お母さん良く来たねとは言われなかった」と話した。榎森さんは「まだまだ男性が子育てに参画していない時代に、ほめ方としてはありではないか」とも。
玉城さんは、家事時間について女性が1日7時間であることに対し男性が1時間弱、という調査結果を示しながら「働く女性はダブルワーク状態。(男性を)ほめて育てるという意味ではありだと思うが、ほめ続けているだけでは社会は変わらない」と指摘した。
榎森さんがアンコンシャス・バイアスに基づいて誰かを傷つけてしまうことを「鼻毛」に例え、「自分では見えないけど他人からは見える。指摘されたら恥ずかしいけど、自分を見つめ直してありがとうと言おう」と会場の笑いを誘った。
(慶田城七瀬)
おきなわ女性財団設立30年 共同参画へ課題多く
1993年に設立されたおきなわ女性財団は今年30周年を迎えた。6月24日に開かれた記念イベントでは同財団の大城貴代子理事長が、県内の女性行政や女性運動の視点から財団設立の経緯を語り、「多くの女性たちの支えがあり30周年を迎えられた」と感謝した。
財団が設立された背景には、75年に国連が提唱した国際婦人年や国際婦人の10年が始まり、沖縄でも女性の地位向上に向けた運動が盛り上がっていた。
92年に大田昌秀県政で県庁に女性政策室が設置されたのを機に、93年12月におきなわ女性財団が設立された。財団の運営資金集めでは、寄付金を募ったり、県内女性団体がファッションショーや歌謡ショーなどを開いたりした。
96年には活動の拠点となる県男女共同参画センター(旧・女性総合センター)が那覇市西に開館した。現在は、女性や男性、性的少数者(LGBTQ)、国際結婚や離婚などさまざまな相談に対応するほか、キャリアアップを目指す女性を対象に「てぃるる塾」などに取り組む。
大城理事長は、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2023年のジェンダーギャップ指数で日本が125位だったことに触れ「超スピードで進む国際社会で、人々の意識の変化に対応するにはまだまだ課題がある。男女共同参画社会の活動拠点として、どんな活動が求められるのか、30年の節目に皆さんと考えていきたい」と話した。
来賓であいさつした玉城デニー知事は、県の男女共同参画計画(DEIGOプラン)に触れつつ「ジェンダー平等な社会の実現には自治体や民間、県民がそれぞれの立場で主体的に取り組み、互いに連携していくことが必要。県もさまざまな施策に取り組んでいく」と話した。
(慶田城七瀬)