【深掘り】辺野古土砂仮置き 政府、当初の埋め立て承認で可能な工事と主張 法的根拠、沖縄県と見解乖離


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2020年の設計変更申請書で防衛省が「変更内容」として示した土砂の仮置きに関する項目

 名護市辺野古の新基地建設で、防衛省は大浦湾側の海域へ投入する土砂を準備するため、実施業者を募集する手続きを進めている。大浦湾側には軟弱地盤が広がっており、工事を進めるには設計を変更して県知事から改めて承認を受ける必要がある。承認を巡る裁判の結果が出ていない中、工事に前のめりな政府の姿勢が表れた。法的根拠を巡っても県と防衛省で見解が乖離(かいり)している。

 大浦湾側に入れる予定の土砂は、先行して埋め立てを進めてきた辺野古側に仮置きする計画だ。

 仮置きする土砂量は約100万立方メートル。辺野古側の埋め立てに必要な総土砂量約319万立方メートルの3分の1に当たる膨大な量だ。

 浜田靖一防衛相は6月の記者会見で仮置き計画を明らかにし、設計変更の承認を得ずとも当初の埋め立て承認で可能な工事だと強調した。

 その根拠とするのが、当初の埋め立て承認で添付した環境保全図書だ。

 資材などを置く作業ヤードの利用条件を記した項目で特記事項として「購入土砂などの仮置は、代替施設の新規埋立箇所に設ける」と記述したことを挙げた。

 だが、土砂の仮置きそのものを主として取り上げた項目はなく、仮置きによる環境負荷や環境対策は明記していない。

 防衛省は仮置き用の土砂も、埋め立て工事と同様、投入した後に締め固め、流出しないようにする「土壌団粒化剤」を使用するため、対策は取れると説明する。

 一方、設計変更申請書では「変更内容」の一つとして、辺野古側の埋め立て区域に大浦湾用の土砂を仮置きする計画が挙げられた。「工期の短縮を図る」と明記し、仮置き場所を示した地図や断面図なども示した。

 当初の承認で可能な範囲であれば「変更内容」と強調する必要はなく、当初の申請では想定外だった可能性が強い。

 県関係者は現行の環境保全図書の記述では「(根拠が)足りると読むのは非常に厳しい」と問題視。県は既存の埋め立て承認で可能な範囲の作業なのか「大きな疑義がある」と指摘し、6月に17項目からなる照会文書を防衛局に出した。

 これに対し12日に返ってきた防衛局の回答は4項目にまとめられていた。工事の具体的な内容や手続きについては「回答は困難」「回答できない」と説明を避けた。

 県関係者は「中身はほぼ答えていない」と強く反発。調整の上で再度照会する考えを示した。

 県は、状況次第では工事が進められない可能性もあるとして手続きの中断を求めたが現段階で防衛局は応じていない。

 防衛局は工事の入札を20日に開札する予定で、丁寧な説明もないまま押し進めようとしている。
 (明真南斗、知念征尚、與那原采恵)