自分の考えを率直に伝えるということ 廣瀬真喜子(沖縄女子短期大学・児童教育学科教授)


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 大好きな夏が来た。この時期になると、子どもたちと毎年参加した学童でのキャンプを懐かしく思う。自然の中で思い切り遊ぶ子どもたちを見ながら、大人もワクワクしたものだ。そこで印象深い出来事があった。

 その日は川遊びをする予定だったが、雷注意報が出た。子どもたちはとても楽しみにしていたため、中止はとても残念がるだろうなと思った。

 指導員の先生は子どもたちを集めると、中止を報告するのではなく「水が一気に増えて危ないよ。どうする?」と問い掛けた。「一番楽しみにしていたし、絶対に川に行きたい!」「でも、川の水が一気に増えたら、特に小さい子どもたちはどうするの?」「俺たちが抱っこする!」。子どもたちは一歩も引かない。

 川の様子を見に行った数名の大人も「小さい子を連れて行くのは難しいよ」と横から声を掛けるが「じゃあ、小さい子は別の遊具で遊んでおけばいい」「そんなのかわいそうだよ」と、なかなか意見がまとまらなかった。長い問答の末、最終的に川遊びは断念し、遊具で遊ぶか、川以外の増水しない水場で水遊びをする、ということで落ち着いた。

 簡単に中止を伝えるのではなく、子どもたちと対話して結論を出させる指導員の姿に、頭が下がる思いだった。同時に、子どもたちが自分の思ったことを率直にぶつけあう姿に胸を打たれた。自分の意見をぶつけても、先生や友だちがしっかり受け止めてくれるという安心感がなければ、あのような話し合いはできないであろう。

 まさに教育現場でキーワードとなっている「主体的で対話的で深い学び」が繰り広げられていたのではないかと思う。遊びの中にも学びがあることを実感した場面であった。