北大東村への移動式警戒管制レーダー配備に向け、防衛省は体育館や火薬庫を含めた15棟の施設がある基地の整備を検討している。部隊は約30人を想定しており、一般的な移動警戒隊の規模だという。ただ、移動警戒隊はそもそも那覇基地など大きな施設に拠点を置いて各地を移動しながら警戒を続ける部隊で、単独の基地を設けること自体が「レアケース」(防衛省関係者)だという。
防衛省によると、基地整備の検討業務は来年1月末までで、その検討を踏まえて施設数や配置を正式に決める。現時点では北側の主要地区に隊庁舎、体育館、火薬庫、通信局舎、鉄塔、電源局舎、補給倉庫、油脂庫、ポンプ室、警衛所、車両整備場、給油所を1棟ずつ想定。南側の地区には通信局舎と鉄塔、哨舎を1棟ずつ設けることを検討している。
体育館は部隊の基本的な訓練や行事に使うことを想定している。防衛省関係者によると、一般的に隊員が常駐する場合は日常的な訓練を天候にかかわらず実施できるように体育館を整備することが通例。屋内プールも備えることを念頭に設計の検討を進めている。村民らにも開放するかどうかについて防衛省担当者は取材に「部隊運用の状況も踏まえて可能なら地元と調整して検討したい」と述べた。
火薬庫は基地警備に使う小銃の弾薬などを保管する予定で、防衛省担当者は取材に「大型の弾薬を置くことは考えていない」と説明した。
ある村議は約8ヘクタールという施設面積の想定に「かなり大きくて驚いた。周囲の自然環境にどのような影響が出るか懸念している。しっかり対応してもらいたい」と求めた。
北大東村議会は自衛隊誘致の意見書で災害発生時に自衛隊と連携して素早く対応できることの他、急患搬送の時間短縮への期待を盛り込んでいた。ただ、防衛省が検討しているのはレーダー部隊で、急患搬送には直接関係ない。
内倉浩昭航空幕僚長も20日の会見で「自治体と部隊がただちに連絡を取ることのできる連絡体制が構築できる」としつつ「今は(急患搬送の)速度や能力が上がるとは言えない」と話した。
防衛省関係者の一人は「求められている事と部隊配備にギャップがある可能性がある。ふたを開けてみて『話が違う』とならないように丁寧に説明するということだ」と説明会の意味を語った。
誘致に関わった村議の一人は「計画はまだ検討段階で、これから変わるかもしれない」と期待をにじませつつ「自衛隊配備で経済効果や人口増加も見込まれるので急患搬送の体制が取れなくても誘致撤回とはならない」と語った。
(明真南斗、岩崎みどり)