沖縄県の米ワシントン事務所 費用対効果は?米議員への影響力は? 仲里所長に聞く 


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米首都での情報発信の重要性を語る県ワシントン事務所の仲里和之所長=20日、県庁

 辺野古新基地建設など沖縄の米軍基地問題を米首都で訴える拠点として設置されている県ワシントン事務所の仲里和之所長が20日、琉球新報の取材に応じた。県の出先として連邦議員らに継続的に働き掛けていくことの重要性を強調した。玉城デニー知事の訪米の成果についても振り返った。

 ワシントン事務所を巡っては、費用対効果の面から県政野党を中心に設置を疑問視する声があり、予算審議などでたびたび追及されている。

 仲里氏は新基地建設問題については「一朝一夕に解決できる問題ではない」とした上で、有機フッ素化合物(PFAS)や騒音、事件事故など多岐にわたる基地問題を伝える重要性を指摘。米連邦議会の下院議員の任期が2年であることに触れ「毎回、議員の入れ替わりがあり、補佐官の異動も激しい。沖縄の情報を継続的に提供することは、とても大事だ」と意義を語った。

 事務所は翁長雄志県政下の2015年に沖縄の基地問題に関する発信強化を狙って設置。仲里氏は昨年4月に赴任し、このほど一時帰国した。日ごろは議員や議員補佐官らと面会し、ニュースレターの発行などで米軍にまつわる事件事故の状況や行政の対応、新基地建設問題の裁判の状況などを発信している。

 知事訪米時の訪問先の調整も担う。玉城知事が3月に訪米した際には基地問題や環境問題を訴えた上下両院議員らとの面談をセットした。

 このうち、ハワイ州選出で県系4世のジル・トクダ下院議員は4月、米下院軍事委員会の全体公聴会で在沖米軍基地問題について発言した。

 トクダ氏は公聴会で新基地建設について「環境・生態系の重大な課題や地元政治家の反対により、この計画が本当に完了するのか疑問が生じている」と指摘した。

 基地周辺のPFAS汚染についても「県民のみならず、米軍人もさらされる可能性が強く示唆される」と問題視。沖縄の戦略的重要性を指摘しつつ「彼ら(県民)を、インド太平洋地域の安全保障や防衛強化に向けた今後の意思決定に加えるべきだ」と訴えた。

 仲里氏は、知事が面談した各議員が「いろいろな形で沖縄問題に向き合ってくれている」と感触を語った。

 知事は、新基地建設反対を決議するなど沖縄の問題に関心を寄せてきたアジア太平洋系アメリカ人労働者連合(APALA)とも面談した。

 APALA側からは米全土の支部を通じて地元議員に在沖米軍に関する対応を促すといった話が返ってきており、仲里氏は「面談をきっかけに話が広がっている」と強調した。

 また、現地でもコロナ禍が落ち着いて面談がしやすくなったとし「議員や有識者らに沖縄の実情を発信するため、来沖を呼びかけていきたい」と語り、情報発信をより強化する考えを示した。 (知念征尚)