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回復者・家族に出会うこと 鈴木陽子(沖縄愛楽園交流会館学芸員)<未来へいっぽにほ>


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鈴木陽子

 今年、沖縄愛楽園は開園85年をむかえます。現在、愛楽園在園者96人の平均年齢は85歳です。平均年齢の在園者にとっては、誕生の年にハンセン病隔離政策の拠点の愛楽園が誕生し、年とともに隔離収容が強化され、自分も隔離されたのです。多くの人々は患者を集落から排除して見えなくし、退所者や家族にも隠れるように生きることを強いてきました。これらの行動は隔離政策のもとで肯定されました。意識しなかったとしても、地域の人々も愛楽園在園者とともに年を重ねてきたのです。

 2001年の「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」では、国の隔離政策は患者・回復者の人権を奪い、被害を与えた誤った政策だと認めました。しかし、米軍統治下の沖縄の隔離政策の被害は不明であるとされました。これに対し、愛楽園と宮古南静園の自治会は自らの手で被害を明らかにしようと、市民参加で在園者から聞き取りを行い、07年に『沖縄県ハンセン病証言集』を刊行しました。15年に開館した交流会館の常設展にも、証言集からの抜粋が多く展示されています。これは在園者一人一人の生の声です。

 園の人々との出会いは、隠され、見えなくされた人の人生との出会いです。生徒たちが愛楽園の人々と出会い、この出会いが人を排除しない平和な社会を築くことを考える場になればと思うのです。今、語り部や証言をした在園者は少なくなりましたが、証言集や園の大人たちや子どもたちの文芸作品があります。

 8月18日、交流会館の教員向け講座で、教育現場で奮闘する方々と一緒に回復者や家族等当事者と出会い、ハンセン病問題について考えてみませんか?