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沖縄景気、20年5月を底に上昇基調 人材不足の対策に「女性が地元で活躍できる環境整備を」 りゅうぎん総研


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 りゅうぎん総合研究所はこのほど、新型コロナウイルス感染拡大による県内景況や労働市場への影響に関する調査リポートを発表した。独自に作成した景気動向指数(CI)は2020年に入り急激に落ち込んだが、その後は入域観光客数などの回復に伴い、上昇基調が続いた。経済活動再開で再び人手不足が顕在化し、労働力確保や雇用のミスマッチ改善が課題となっている。

 CIは入域観光客数や小売売り上げ、着工床面積、有効求人倍率など七つの指標を基に、15年を100として景気変動の大きさを数値化している。19年には減速傾向がみられ、コロナ拡大で急激に悪化し20年5月に74まで落ち込んだ。特に入域観光客数や主要ホテル稼働率の観光指標が与える影響が大きく、これらの回復に伴い22年8月は101となるなど、上昇基調が続いた。

 内閣府がまとめる県内の消費総合指数も、20年5月には底を打ち、その後持ち直した。「巣ごもり需要」によるものと推察されるという。20~21年は金融機関のコロナ関連融資が急増し、県内地銀の実質預金は政府の定額給付金の支給もあり増加率が高まった。

 経済活動再開で、労働市場では再び人手不足感が強まっている。りゅうぎん総研がまとめた県内事業所の欠員率は20年7~9月に3・1%まで低下したが、その後は上昇し23年1~3月期は4・6%。日本復帰以降で最も高かった19年4~6月の水準(5・0%)に近づいている。

 有効求人倍率が再び1を超え、求人不足が原因となる「需要不足失業率」は低下した。そのことが完全失業率低下にも寄与しているが、コロナ禍前から続く雇用のミスマッチによる「構造的失業率」が課題。特にコロナ禍では、求職者が減少した医療・福祉など専門的、技術的な職種でミスマッチが拡大した。

 リポートをまとめたりゅうぎん総研の金城毅客員研究員は、人手不足への対応策として当面は外国人や高齢者、女性の就労者増加に依存せざるを得ないと指摘。「多くの地方では女性の首都圏への転出率が男性より高く、地元で活躍できる環境整備も必要になる」と説明した。