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PFAS問題 日米は透明性確保を 大城尚子(北京工業大講師)<女性たち発・うちなー語らな>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2023年7月、琉球民族独立総合研究学会とちゅら水会が在沖米軍基地に由来するPFAS(有機フッ素化合物)問題の声明文をEMRIP(国連先住民族の権利に関する専門家機構)で読み上げた。ちゅら水会は県による汚染源特定の立ち入り調査が米軍に拒否されていると報告した。琉球新報と沖縄タイムスが報じた、このニュースは中国語に翻訳されWeb記事にもなった。

 7月19日には中国最大のメディアグループCMG傘下の中国国際放送局が7月15日に多摩地域(東京都)の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会が主催した琉球朝日放送のドキュメンタリー「命の水」上映会と島袋夏子氏(QAB)の講演を報じた。

 昨年、国連の環境問題に関する特別報告者も在沖米軍基地や自衛隊基地から漏れ出したPFASが「検出され続けていることが懸念される」と問題視し、10月に開かれた国連総会第3委員会で発表された報告書「有害物質が先住民の人権に与える影響」に、ハワイやグアムなど世界各地の軍事基地により、先住民族の人権が脅かされている事例として記載した。

 市民の行動によって島袋氏とジョン・ミッチェル氏が明らかにした在沖米軍基地由来のPFAS問題は国連の報告書に含まれ、世界各国で報道された。

 また、今回のEMRIPで米政府代表の発言はなかったが、日本政府代表からPFASなどについて「政府全体が日本の全ての人々から懸念を取り除くために、米国の関連機関との協力を含めて取り組んでいる」という発言を引き出したことも、市民の行動による成果の一つだ。原発処理水の海洋放出と同様に軍事基地由来のPFAS問題も注目されている。

 とはいえ、国連で訴えても在沖米軍基地問題を解決する責任は日米両政府にある。これまで沖縄県や市民団体が行ってきた両政府への直接要請も重要だ。

 チョウ類研究者の宮城秋乃氏は、やんばる世界自然遺産に登録されている、2016年に返還された北部訓練場跡地の米軍廃棄物問題を訴えている。また、吉川秀樹氏や河村雅美氏と共に世界自然遺産の調査や審査をするIUCN(国際自然保護連合)にも訴えている。宮城氏が1人で始めた行動の結果、今年6月19日に沖縄県警と沖縄防衛局に同地域の未使用の銃弾を含む米軍廃棄物を確認させた。

 しかしながら7月26日に発表された、やんばるの自然保護の日米共同声明は、宮城氏が指摘するように米軍廃棄物の撤去などは含まれてない。米軍基地由来のPFAS問題も肝心な部分が含まれない恐れがある。日米両政府はこれらの問題に対しても透明性とアカウンタビリティー(説明責任)のための枠組みを構築しなければならない。