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【記者解説】沖縄の最低賃金43円引き上げへ 時給896円に決まったポイントは「地域間格差の是正」


この記事を書いた人 琉球新報社

 県内の最低賃金を巡る議論は、現行の時給853円を43円引き上げ、896円とすることで決着した。中央審議会が示した目安39円を4円上回ったのは、全国より高い物価上昇率を考慮するとともに、地域間格差の是正を図る狙いがある。

 労使双方の代表者らが最低賃金の改定額を具体的に議論する専門部会は当初、労使で引き上げ額に27円の開きがあった。歩み寄りは見せたが、溝は埋まらず。審議会で採決となり、最終的に労側が提示した額に賛同した形で答申がまとまった。

 厚生労働省の中央最低賃金審議会は全国平均の引き上げ率を平均4.3%と提示。2022年10月~23年6月の消費者物価指数の前年同期比と同じ伸び率だった。県内の同時期は4.4%で全国水準を上回っていた。

 さらに県内は全国に先駆けて景気回復に向かっている。有効求人倍率は改善傾向にあることなども背景に、答申は5%の引き上げ率となった。人手不足への対策と労働者の生活水準を高くする必要があると判断した格好だ。

 一方で資源価格が高騰する中で中小・零細規模が多い県内企業にとっては厳しい内容となる。十分に価格転嫁できていない状況に、賃金上昇が追い付かなくなる可能性がある。深刻化する人手不足の課題解決を図り、経済の好循環をつくり上げる上で、行政には企業が賃上げの原資の確保に取り組めるよう実効性のある支援の継続が求められている。
 (謝花史哲)

■大幅引き上げ労使に溝 審議会の採決で判断

最低賃金の引き上げ幅を巡り労使の隔たりが続いた沖縄地方最低賃金審議会の会合=7月31日

 最低賃金の改定額を労使双方が具体的に議論する沖縄地方最低賃金審議会の専門部会は14日まで、7回にわたる会合を開いたが、議論は平行線をたどった。

 中央審議会の示した目安額通りに適用されても、東京の1113円に対し、沖縄は892円で221円の開きがあり、労働者側は地域間格差の是正を訴えた。一方、使用者側は大幅な引き上げは中小企業にとって厳しいとの認識で、結局は一致点を見いだすことはできなかった。

 7月20日に第1回を開始。第4回で労働者側は現行の853円から47円を引き上げ、900円とする案を提示した。一方で使用者側は20円引き上げて873円とする案を示し、27円の差があった。第5回で使用者側が33円の引き上げを提示。第6回で労働者側は引き上げ額を43円とし、使用者側も38円とするなど、妥協点を探った。

 しかし、14日の第7回会合でも溝は埋まらず、労働者側の意見を反映した896円と使用者側の提示した891円で採決を取ることとなり、審議会の判断に委ねられた。

 産業別の「特定最低賃金」の諮問については「必要性あり」の結論にはならなかった。