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【深掘り】辺野古新基地で新たな訴訟 沖縄県が期待を寄せるものとは? 9月の最高裁も注視


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
高い生物多様性を誇る大浦湾の海=2021年9月、名護市

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地で埋め立てを阻止しようと、県は17日、大浦湾側のサンゴ移植を止めるべく新たな裁判を起こした。同様にサンゴ移植が争われた2021年の最高裁判決では2人の裁判官が反対意見を付けた経緯があり、県政与党内には期待を寄せる見方もある。だが、県が移設阻止の「切り札」とする大浦湾の軟弱地盤の設計変更申請を不承認とした県判断を巡る最高裁判決は9月にも出る見通し。その内容は今回の裁判に大きく響くため、関係者は動向を注視する。

 「サンゴ類特別採捕の『必要性』を具体的に考慮することなく、農林水産相の裁決を追認した」

 玉城デニー知事は提訴を受けたコメントで、農相の是正指示を違法ではないと結論付けた国地方係争処理委員会の判断を問題視した。

 当たり前

 防衛局は現在、大浦湾側の埋め立てに使う土砂を辺野古側に仮置きする計画を進めている。サンゴの移植も、仮置きと同様に県から埋め立て承認を得た場合に備えておく狙いがあるとみられる。

 ただ、大浦湾側の工事を巡っては、設計変更申請を県が不承認としたため、国は現在も大浦湾側の埋め立て工事ができない状態が続いている。

 これまでに移植されたサンゴの研究から、移植されたサンゴは一定程度死滅することが見込まれる。埋め立て工事が進められるかが確定しないまま移植を強行すれば、一定のサンゴに無用な犠牲を強いることになりかねない。

 県政与党幹部の一人は「設計変更を承認していないのに、移植を許可するわけにはいかない。訴えるのは当然だ」とつっぱねた。

 依拠

 今回の裁判は「設計変更申請を不承認としたことに依拠」(県議)した裁判とも言える。

 裏を返せば、不承認を巡る裁判で県が負けて承認に追い込まれれば、今回提訴したサンゴ移植に関する訴訟についても主張が成り立たなくなる可能性をはらんでいる。

 国は不承認を巡る訴訟で最高裁でも勝利することを前提に、その後の県の対応方針を見極めようとしている。防衛省関係者は「承認してくれればよいが、移設阻止を掲げている以上、それほど簡単に諦めないのではないか」と語った。県が承認申請に応じない場合、国側から訴訟を起こすことも検討する構えだ。

 県関係者は今回の裁判の見通しについて「不承認を巡る最高裁判決が厳しいものだったとしても、中身でどこまで踏み込むかにもよる」と慎重に見極める姿勢だ。

 県政与党関係者は「最高裁判決で勝っても負けても、これで全てが解決するものではない」と語る。そのため、県は法廷闘争と並行して、国際社会への訴えも進める。9月に知事が国連演説に出向く計画もあり、法廷外での闘いの一環として「オール沖縄」陣営内には期待感もある。
 (知念征尚、明真南斗)