小さな島の大きな綱引き 沖縄・渡嘉敷島 1本勝負に200人が大熱戦 帰省した高校生らの旗頭競演も


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4年ぶりに開かれた大綱引きで勝利した東=11日午後6時すぎ、渡嘉敷村役場前大通り

 【渡嘉敷】豊穣感謝と村民や郷友会などの融和、親睦交流を図る渡嘉敷村渡嘉敷区(知念優区長)の300年余の伝統を誇る大綱引き行事が旧暦6月25日(6月カチシー)の8月11日、渡嘉敷村役場前大通りで4年ぶりに開かれた。東西の参加者200人余が全長約150メートルの大綱を引き合う1本勝負の大熱戦の末、約2分で東に軍配が上がった。東が勝つと豊漁、西が勝つと豊作と言われる。

綱引き後、カチャーシーを踊り交流を深める住民ら=11日午後6時半ごろ

 2019年の8月3日の綱引きで西が勝利して以来、綱引き行事はコロナ禍で3年連続中止となり、昨年は伝統継承のため規模を縮小した大綱の神社奉納とお披露目式のみとなった。

 従来、綱引き当日の日に綱作りから綱引きまで行っていたが、今回からは、1週間前から東西の所定場所で綱作りを始め、綱引き当日に大綱を完成させた。

 午後5時半に役場前に東西の区民らが大綱を運びこみ、大勢の村民や観光客が見守る中、帰省した高校生や青年会らの旗頭の競演で気勢を上げた。午後6時、知念区長の合図でカヌチ棒が東西の大綱頭に差し込まれて勝負開始。どらの音が響き渡る中、会場は熱気に包まれ、勝敗が決まると歓声が響き渡り、人口約700人の小さな島の大きな綱引きに会場は盛り上がった。綱引き後は同会場で交流会が開かれ、区からビール、酒、飲料水などが参加者に振る舞われ、エイサー、フラダンス、空手などのアトラクションもありにぎわった。

 住民の小嶺勇夫さん(93)は「久しぶりに興奮した。コロナ禍や台風などで憂鬱(ゆううつ)な気持ちが吹き飛び、元気をもらった。村の繁栄を願う」と満面の笑みを浮かべた。観光客の佐藤博さん(52)=福岡=は「島の自然や島民の伝統行事を継承する心意気に感動した」と笑顔を見せた。
 (米田英明通信員)