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沖縄風いなり、都心で定着なるか 「オイナリアン」が昨年秋に東京1号店 すしとチキンの組み合わせ、お盆需要の販売好調


この記事を書いた人 Avatar photo 與那嶺 松一郎
沖縄風いなり寿司を客に提供するオイナリアン平和島店スタッフの和田幸雄さん(提供)

 沖縄風いなり寿司を製造・販売するトキなりフーズ(宜野湾市、吉里時浩社長)の県外1号店として昨年10月に開業した「オイナリアン平和島店」(東京都大田区平和島)が初のお盆を迎え、都内に住む県出身者を中心に販売数を伸ばしている。フランチャイズオーナーとして平和島店を取り仕切る小玉智子さんは「関東での盆にも普段より客が多かったが、沖縄の旧盆に合わせた予約もあった」と需要増に対応した。

 テイクアウト専門店で、看板メニューは薄皮の油揚げに国産のお米やごまを使用した沖縄風のいなり寿司とガーリックチキンを組み合わせたセット。うるま市の工場で製造した油揚げを空輸し、本場の味を新鮮な状態で店舗に届けている。オープン当初は認知度不足で売上げが伸び悩んだが、現在は月に平均約6千個売れている。

 関東ではしょうゆが効いた濃い味付けの俵型いなり寿司が一般的で、歌舞伎座の昼食や手土産の定番として古くから重宝されるなど高級品や老舗店も多い。一方、沖縄のいなり寿司はしょうゆを使わない薄味で、油揚げも薄く、片手で手軽に食べられる三角形が定番だ。家族や親戚の集まりでおやつ代わりとして親しまれている。

オイナリアンで提供されている沖縄風いなり寿司とチキン

 吉里社長によると、いなり寿司もフライドチキンも県内での消費量は全国平均と比較して高い。吉里社長は「シーミーの墓参りで家族が集まるときに、暑い夏でも安心して食べられるように酢を使ったいなり寿司や油で揚げたチキンが重宝されたのではないか」との見方を示す。

 平和島店の小玉さんは神奈川県横浜市の出身で、毎月沖縄を訪れる沖縄フリークだった。沖縄そばやタコライスといった定番のメニューをある程度体験した後、地元の人から「沖縄県民はいなり寿司をよく食べる」と聞き、興味を持った。「関東のいなり寿司と味も見た目もまったく違うので驚いた。お盆のときに家族で食べる習慣も関東にはなく、沖縄独自の文化を感じた」。2012年に吉里社長に直談判し、都内での出店を実現させた。

 「当時は1店舗を運営するだけで手一杯で県外まで手を広げる余裕がなかった」と振り返る吉里社長。しかし、製造工程の見直しにより工場の稼働力を上げたことなどで那覇、八重瀬、石垣、宮古島と県内4市町にフランチャイズ展開した。そして昨年秋に東京進出を果たし、同時期には宜野湾市愛知にも新店舗をオープンさせた。

昨年10月に東京大田区平和島にオープンしたオイナリアン平和島店(提供)

 大田区は県出身者や沖縄にルーツを持つ住民も多く、「口コミで遠方から足を運んでくれる人や常連客も増えた」(小玉さん)。「沖縄そばやチャンプルーを出す沖縄料理店は多いが、沖縄風いなり寿司は都内ではなかなか食べられない。感激して泣きながら食べてくれた客もいた」と話す。

 池袋や横浜で開催された沖縄物産展やイベントでは1日に千個以上売れることも。今年11月には鶴見区で開催される「鶴見ウチナー祭」にも出店予定だ。小玉さんは「沖縄県民にとっていなり寿司は大切なローカルフード(郷土食)の一つだ。都内ではまだ知名度は高くないが、沖縄風いなり寿司のおいしさをアピールし、ムーブメントをつくりたい」と意欲を見せた。

 海外への出店も視野に入れ、設備投資や商品開発に力を入れているトキなりフーズ。吉里社長は「沖縄のいなり寿司を世界に広めたい」と目標を語った。

 (普天間伊織)