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【記者解説】地方自治のあるべき姿を否定 辺野古裁判、最高裁判決


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
埋め立て工事が進められる米軍キャンプ・シュワブ沿岸=4日、名護市瀨嵩

 最高裁は4日、名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟で、県の上告を棄却した。公有水面埋立法の承認要件を満たしているのかの判断すら示さず、県民投票、県知事選、各種世論調査などで繰り返し示されてきた辺野古反対の民意を切って捨てるような3千字に満たない判決からは、法理によって問題の解を求めようという「法の番人」としての気概さえ感じられない。県民はあと何度、司法への落胆を感じなくてはならないのか。

 翁長雄志前知事を継ぐ形で2度の知事選に当選した玉城デニー知事は、辺野古ノーの民意を背に、新基地建設の阻止を県政の最大の課題として取り組んできた。

 法廷闘争はその一つの手段に過ぎず、県が訴訟と並行して政府に求めてきた日米両政府との協議の場は実現していない。いたずらに訴訟を乱発しているのではなく、生活を、環境を守りたいという悲痛な声を届けるためには司法の場に訴えるしかないのが実情だ。

 国と地方が対等の立場で住民生活の向上に取り組むという、地方自治のあるべき姿が否定されようとしているにもかかわらず、全国的に問題意識が共有されているとは言いがたい。対米軍の構図となる問題について、政府が県民の声に耳を貸さず思考停止に陥るのは、辺野古に限った話ではない。県民が求め続けてきた日米地位協定の改定や、飲料水の汚染源特定さえも基地のフェンスに阻まれている。

 権威主義の中央集権国家ではなく、人権を尊重し地方自治を重んじる法治国家ならば、沖縄の民意に真正面から向き合うのは当然のことだ。行政手続き上は県が追い詰められつつあるが、問われているのは国の方だ。

(沖田有吾)