米海軍の掃海艦が石垣港に入港した。2009年に寄港した際は「友好親善」などと強調して軍事的な利用を覆い隠してきたが、今回は途中から目的を「通常寄港」に切り替えて寄港前の掃海訓練も明らかにした。日米両政府が米軍と自衛隊による民間インフラの利用拡大を狙う今、民間港への寄港を当然視する米軍の姿勢が表れている。
米軍や自衛隊が民間インフラを利用したがっているのは、台湾有事となった場合に中国と戦う上で利用できる拠点をできるだけ多く確保しておきたいからだ。石垣港に入った掃海艦「パイオニア」のチェイス・ハーディング艦長は「地域の中でできるだけ多くの港を使っておく訓練だ」と強調した。
前回の寄港時にはなかった埋め立て地のクルーズ船バースに入ったことで、接岸までに必要なデータを得たとみられる。一度利用して情報を記録することは今後、港湾や空港を利用する際の円滑さに大きく関わる。
一方、防衛省関係者は「最も大きな狙いは、入港による地元の反応を見ることだろう」と推察する。寄港目的の変更や訓練実施を明かしたことについては「寄港できて当然だという本音が出たのではないか」と語った。
09年に掃海艦が寄港した際、当時の大浜長照石垣市長、仲井真弘多知事は反対姿勢を示していた。
今回も市民約50人が集まって反対の声を上げ、全日本港湾労働組合(全港湾)沖縄地方本部(山口順市執行委員長)が組合員の自宅待機を検討するなど、掃海艦寄港は波紋を呼んだ。
だが、今回、中山義隆石垣市長は日米地位協定の取り決めで市に拒否権はないとの立場を取った。別の防衛省関係者は「最初から中山市長が受け入れの姿勢を示しており、09年の時とは状況が違う」と強調した。自衛隊関係者も「これまで沖縄は反発が強い印象だったが、今回は運用に支障が一切なかった。米軍は今後も運用できるという感触を得ただろうし、自衛隊もこの程度なら入港できる」と話した。
今回の寄港を足がかりに米軍と自衛隊が県内の港湾や空港を使い、さらに本格的な訓練を試みる可能性が高まっている。
県政与党関係者は「民間の港に軍艦が来ること自体が『通常』じゃない」と指摘。「既成事実になって入港が常態化しかねない」と警戒感を示した。
(明真南斗、知念征尚)