知事、民主主義問う 「米施政権下と変わらず」 辺野古代執行訴訟第1回弁論


この記事を書いた人 志良堂 仁
代執行訴訟の第1回口頭弁論の意見陳述のため、険しい表情で福岡高裁那覇支部に入る翁長雄志知事(左)=2日午後1時37分、那覇市の福岡高裁那覇支部

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事の辺野古埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求めて国土交通相が提起した代執行訴訟の第1回口頭弁論が2日午後2時、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で開かれた。県と政府が米軍基地問題をめぐり裁判になるのは、20年前の1995年の代理署名訴訟以来で、2度目となる。翁長知事は意見陳述で米軍基地が集中する中、新たな基地負担が県民意思に反して押し付けられようとする現状を「米軍施政権下と何ら変わりない」と述べ、悲惨な地上戦と日本からの切り離し、土地の強制接収による基地形成という沖縄が歩んだ戦後史と重ね合わせた。さらに「22世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしている」として、将来まで沖縄の過重負担が続きかねない“不条理”を法廷で訴えた。

 沖縄が基地経済に支えられているとの風説に対しては「完全な誤解だ」と強く訴えた。新基地問題が沖縄だけの問題ではないとの思いを念頭に「日本の地方自治や民主主義は存在するのか。国民に問い掛けたい」と述べた。
 訴訟では双方の代理人が主張の要旨を口頭で説明した。国側代理人は国防や外交は承認における知事の裁量の範囲外などと主張し、承認に瑕疵(かし)はないと主張した。承認取り消しにより普天間飛行場の危険性除去の遅滞などの「膨大な不利益」が生じるとして、仮に承認に瑕疵があっても取り消せないとして、速やかに国の訴えを認めるよう求めた。
 県側代理人は国が行政不服審査法に基づく審査請求・執行停止申し立てをして代執行訴訟を提起したことを「訴権の乱用」であると批判したほか、他の手段がない場合に認められる代執行の要件を満たしていないとして訴えを退けるよう求めた。
 要旨の説明後は、多見谷裁判長が書面で提出された双方の主張に質問する形で進められた。国防や外交は国の専管事項だという国の主張について、県側と国側の議論が白熱する場面もあった。県側が申請していた証人採用について、2日の弁論やその後の進行協議では判断されなかった。訴訟はこの日で結審はせず、次回弁論を1月8日、次々回を同29日に開くことが決まった。