【島人の目】強者の横暴がテロを呼ぶ


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 パリ同時多発テロ事件以来イタリアは厳戒態勢下にある。過激派組織「イスラム国(IS)」が、バチカンとスカラ座などを標的にテロを準備している可能性がある、と米FBIが警告したからだ。他の欧州諸国でもイタリアと似たり寄ったりの緊張状態が続いている。

 テロは断じて許されるべきことではない。だがテロには、切羽詰まった弱者が巨大な権力に歯向かう手段、という側面もあることは否定できない。イスラム過激派が欧米に仕掛けているテロは本をただせば、権力者の欧米が中東などで犯した過去の罪の因果応報、という見方もできる。強者の横暴に対する弱者の反発がテロなのである。
 荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、強者の安倍政権が辺野古をめぐって弱者の沖縄にしている横暴は、世界基準で見ればテロが起こっても不思議ではないほどのあきれた差別であり陵辱だ。武の国ではない沖縄からはテロは生まれないだろう。また沖縄の何者もその方向に行ってはならない。が、事態の深刻さは強く意識されるべきだし沖縄は抗議も続けるべきだ。
 安倍政権は普天間基地の辺野古移設計画を見直し、万が一にも沖縄に不穏な火種が生まれないように行動を起こすべきだ。国内にテロとまでは言わなくとも、深刻な騒乱を誘発しかねない事案がある時には、何よりもまずその原因を見つめて取り除くことが優先されるべきである。それが安倍晋三さんの好きな真の抑止力であり国防であり愛国である。安倍さんはいつになったらそのことを理解するのだろうか。
(仲宗根雅則、TVディレクター)