【島人の目】ドイツの難民受け入れ


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 昨年9月にメルケル首相がシリアなどからの難民受け入れを決め、昨年だけで100万人以上がドイツへ来たそうだ。毎年難民を多く受け入れているドイツでも、これほどの規模は過去になく、この先課題も不安も多い。だがこのニュースで、困った人に手を差し伸べるドイツ市民の温かさを感じた。東京電力の福島原発事故を受け脱原発へ政策転換したことに続き、国家として短時間でこれだけの決断ができる強さも感じた。

 かつて役所だった近くの空き施設は受け入れ施設になり、多くの見慣れない人が出入りした。携帯電話を手に聞き慣れない外国語で話す人々の姿に不安も覚え、そばを通るたび子どもの手を握った。一時ごみが増えてがっかりしたが、すぐに改善した。自省も込めて、今後ドイツ社会で生活していくための言語の取得、文化の理解などが重要だ。施設の受付で聞くと何でも必要だというので、寒いドイツの冬を前に服やおもちゃ、布団カバーなどを寄付した。
 近くの友人らを見ても、多くのドイツ国民が他者への関心を持ち、ボランティア活動などで人道問題として難民受け入れを支えていることを素晴らしく思った。
 だが受け入れをめぐりメルケル政権に批判も多い。大みそかにケルンの中央駅前などで起こった集団性的暴行事件は醜く、容疑者の多くが北アフリカなどからの難民だったことから受け入れへの批判は強くなっている。
(田中由希香、ドイツ通信員)