【島人の目】キング牧師のスピーチ


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 1月の第3月曜日は、公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師の生誕を祝う祝日である。1963年夏、25万人近くの人が「今こそ自由を!」をスローガンにワシントンDCに集結した。

 キング牧師がその日演説した伝説のスピーチの全容の動画を初鑑賞した。原稿に一切目を通さず一句一句に抑揚をつけ、比喩を用いて熱弁するキング牧師の、34歳とは思えないような威風堂々とした姿に魅了させられる。マハトマ・ガンジーの平和主義思想の影響を受けたスピーチには「憎しみを持つなかれ」との人間愛が随所にあり感動させられた。
 暴力で報復しても問題は解決しないと非暴力によって権利を勝ち取ることを力説する。終盤「I havea dream」を繰り返し、独立宣言にある「全ての人々は平等であることを自明の真理と信じる」との信条を公民権運動によって真の意味で実現させたいと語った。さらに勇気をもって最後まで闘い、自分たちで国の未来を変えたいとしたキング牧師の夢。そしてとうとう翌年、公民権法を通過させた。
 沖縄にも夢がある。基地のない平和な島。地元民の対立や争いがなく、戦闘機の騒音が普通になる異常な環境を変え、自然を破壊する軍事演習がなくなり、多くの観光客が訪れてイチャリバチョーデーのおもてなしで癒やされる島であることだ。
 だが、政府は相も変わらず理不尽なアメとムチで辺野古の埋め立てを強制遂行しようとしている。不平等と差別が渦巻いていたアメリカの暗い時代をほうふつさせる。キング牧師は言う。「黙って服従することはしばし安易な道であるが、決して道徳的な道ではない。それは臆病者の道なのだ」と。
(鈴木多美子、米バージニア通信員)