『タピックの新医療革命』 「創造と再生」の物語


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『タピックの新医療革命』宮里好一、比嘉佑典著 ゆい出版・2500円+税

 本書は、戦後70年という厳しい時代を生き抜いてきたシニアへの深い思いと4半世紀の歴史を歩んできた医療法人タピックが「医療交流」を通して「ウエルネス産業・医療産業」の創出を目指してきた記念誌である。

 それと同時に「目の前の瀕死の人を助けられる精神科医」を目指した宮里好一医師が「健康と生きがい」づくりのトータル医療の実現を目指し果敢に挑戦してきた「創造と再生」の物語でもある。何事もそうであるように、理想の実現には常に苦難が付きまとう。それをどのように乗り越えてきたかを示すモデルは読者へ大きな感動を与える。
 「タピック・TAPIC」は英語の頭文字から取られ同氏の医療に対するビジョンが「5文字」に鮮明に描かれている。「T」はTotal(総合性=患者を心身ともに社会性を備えた総合的存在としての総合医療)、「A」はAcademic(探究性=未踏な分野を目指して研究する専門家集団)、「P」はPopular(患者の立場=原点は病む心への援助)、「I」はInternational(国際性=視野をアジア・世界に向ける)、「C」はCenturial(21世紀にふさわしい=新世紀の医療の担い手)である。
 まさに「21世紀にふさわしい」新世紀の医療・生活サービスの担い手として、医療の世界の改革にチャレンジしてきたことが随所から読み取れる。さらに「地球規模で考えながら自分の地域で活動する」というグローカルな総合医療を目指し、「健康な人間」「生きがいのある人生」こそ医療の究極と捉え、スポーツ、健康教育、文化活動、自然と健康などの各テーマをタピックの10のネットワーク(沖縄リハビリテーションセンター病院等)の施設で展開し地域連携型のトータル医療のモデル確立へ向けて挑戦してきた実践例は医療分野のみならず各界各層でも大いに参考になるだろう。
 21世紀の新たな旗手として未来の歴史の先頭へ挑戦し続ける「タピックの新医療革命」へエールを捧げるとともにタピックの動向に注目していきたい。
 (大城浩・ペアーレ楽園幸寿大学校名誉学長、前県教育長)
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 みやざと・よしかず 1954年生まれ。岡山大医学部卒。医学博士。医療法人タピック理事長。

 ひが・ゆうてん 1940年生まれ。琉球大卒、東洋大大学院修士課程中途退学(同大助手就任のため)。学術博士(教育学)。タピックグループ顧問。