『地元ガイドが書いた 那覇まちま~いの本』 まちの歴史と今をつなぐ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『地元ガイドが書いた 那覇まちま~いの本』那覇まちま~いガイド文芸部編著 ボーダーインク・1600円+税

 まち歩きが全国的にはやっている。人気の行き先は必ずしも観光スポットとは限らず、地元の人も驚くような裏路地や主婦が日常的に通う店。建物や歴史知識を学ぶお勉強タイプではなく、ガイドがいるから可能なまち体験が人気を集めている。ガイドは陰の立役者だ。

 『地元ガイドが書いた那覇まちま~いの本』は、そんなまち歩きのガイドさん17人が主役の本。「まちま~い」は那覇市観光協会が事務局を務める大人気のまち歩きツアーで、本書はその一部のコースを実際のガイドがエッセイとコラムで紹介したもの。
 ページをめくると最初のコースは「那覇の市場 迷宮めぐり」。案内役はガイドの宮城さんだ。「ここ牧志公設市場界隈の歴史は、アメリカ軍の統治下から始まります。」と、読者はもう那覇にいる。集合場所を出発し、宮城さんの案内でむつみ橋通りから公設市場へ。市場を巡った後にはいよいよ迷路のような小さな通りへ。
 宮城さんは、一緒に歩きながらのぞいた店舗や商品にちなんで琉球の歴史や沖縄の食文化を分かりやすく教えてくれる。イラブーの説明では、風邪をひいた孫にスープにして食べさせたエピソードを披露。ガイドをしていると自身の幼い頃の思い出が蘇(よみがえ)ってくるとかで、母親に連れられて来たかつての情景にも短く触れている。
 まち歩きなのにガイドの個人的な体験を知ってぐっとくるのはなぜだろう。こうして一人一人が一日一日、このまちで生きているのだなという実感が、まちの歴史と「今」と「私(参加者)」をつなげてくれるのだ。
 次のコースの案内は小菅さん。どんな人かと思わず先にプロフィールを見てしまう。行き先だけでなく文章の書き方もそれぞれ違い、興味や関心、性格までもが伝わってくる。共通しているのは、皆とても楽しそうだということ。
 本書は、地元でも知られていない那覇の魅力を知ることができるツウなガイドブックとして面白い。と同時に、「みんな違って、みんないい」と感じる喜びも教えてくれる。
 (久保田美穂子・公益財団日本交通公社観光研究情報室長)
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 なは・まちま~い 那覇まちま~い事務所は、「ガイドとめぐる那覇のまち」をテーマに、歴史や文化に詳しい地元ガイドがローカルネタを交えながら那覇のまちを案内する「那覇まちま~い」を実施している。

地元ガイドが書いた那覇まちま~いの本―一緒に歩こう那覇のまち
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