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轟の壕 糸満市が内部映像を公開へ 落石や崩落の恐れ受け


轟の壕 糸満市が内部映像を公開へ 落石や崩落の恐れ受け 落盤、落石への注意を呼び掛けるポールや柵が設置された「轟の壕」入り口=20日、糸満市伊敷
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 【糸満】沖縄戦で住民や敗残兵ら千数百人が避難した糸満市の「轟の壕」について、市は内部映像を撮影し市ホームページ(HP)で公開する事業に本年度着手する。

 入り口付近で落石が相次ぎ、壕の崩落が進む恐れもあることから、「沖縄戦当時の状況を緊急に記録する必要がある」と判断した。平和学習のガイド団体は、壕崩落防止の抜本的整備を求めているが、市や県によると整備の見通しは立っていない。

 事業は来年度まで2年間。本年度中に撮影、測量を行い、来年度中に市HP上で、壕内の地点を指定すると360度映像が見られる仕組みを公開する。事業費1230万円を計上した市一般会計補正予算案が12日の市議会本会議で可決された。

 轟の壕は沖縄戦で島田叡(あきら)知事も一時避難し、県庁を解散した地で、平和学習に活用されてきた。市によると民間地で、管理者はいない。2020年以降、壕に向かう坂道や壕の入り口付近で落石が相次ぎ、市が注意喚起の看板を設置している。

 県観光ボランティアガイド友の会は事故防止のため、今年4月から内部の案内を中止している。太田玲子事務局長は「実際に壕に入ることで、沖縄戦について学んだ知識が実感を伴い定着する。崩落防止対策は平和行政としても絶対に必要だ。映像公開は一時的な措置として、県や市は責任を持って崩落防止策を進めてほしい」と強調した。

 糸満市によると、崩落防止整備費は多額になるため、県に整備を要望している。県文化財課の担当者は「現時点で整備予定はない。県内で同様の状況にある壕が多数あり 課題が山積している」として、「優先的な整備に向けて、まずは市文化財に指定することも一つの方向性ではないか」と語った。

(岩切美穂)