新基地工事中断 県と国、和解成立 辺野古代執行訴訟


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
代執行訴訟で成立した和解内容について説明する翁長知事(左から3人目)=4日午後3時10分ごろ、防衛省

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の埋め立て承認取り消しをめぐり、国が翁長雄志知事を訴えた代執行訴訟で、4日正午ごろ、福岡高裁那覇支部で和解が成立した。和解は(1)国は代執行訴訟と埋め立て承認取り消しに対する執行停止を取り下げる(2)工事を中断し、問題を再協議する(3)折り合いがつかなければ「最後の手段」とされる代執行手続きよりも強権的ではない地方自治法に基づく是正指示、国地方係争処理委員会での審査、是正指示の取り消し訴訟をやり直す-との内容。県と国の協議は判決確定まで続ける。埋め立て承認の取り消しをめぐり、この新たな手続きに沿った法的な争いの結論が出るまでには、今後1年程度を要することも想定され、その間、工事は中断する。安倍晋三首相は同日、中谷元・防衛相に工事の中断を指示した。

 翁長知事の埋め立て承認取り消しに対する執行停止の取り下げが決まったことを受け、この執行停止は違法だとして県が国を訴えた係争委不服訴訟と抗告訴訟も取り下げが決まった。
 県軍用地転用促進・基地問題協議会の要請で上京していた翁長知事は4日午後、首相官邸や防衛省で記者団の取材に応じ「工事が止まることは大変大きい」「裁判闘争を取りやめて話し合いを始めるのは望むところだ。展望を見いだしていきたい」などと述べた。
 4日昼に官邸で和解成立を発表した安倍首相は「延々と訴訟合戦を繰り広げれば膠着(こうちゃく)状態となり、普天間が固定化されかねない」などと述べ「裁判所の勧告を受け入れ、県と和解する決断をした」と表明した。
 一方、安倍首相は「普天間飛行場の全面返還のためには、辺野古移設が唯一の選択肢という考え方に変わりない」とも強調。翁長知事は「大変残念な発言だ。和解に応じた時に話す言葉ではない。県民に寄り添いながら協議を進めてほしい」と反発した。代執行訴訟では和解に至ったが辺野古移設計画に対する認識では大きな隔たりを見せた。
 和解で合意した「暫定案」には再び裁判になった場合、判決に従うことが盛り込まれている。このことが「辺野古新基地建設を阻止する」とした自身の政治姿勢に影響するかを記者団に問われた翁長知事は「辺野古基地は造らせないという公約で知事になった。あらゆる手段を使って基地を造らせないということをこれからも信念を持ってやっていきたい」と述べ、今後も公約を維持するとした。