沖縄戦で被害を受けた民間人や遺族ら79人が国に謝罪と損害賠償を求めた「沖縄戦被害国家賠償訴訟」の判決が16日、那覇地裁で言い渡された。鈴木博裁判長は「大日本帝国憲法下において、国の公権力の行使による賠償責任は認められない」などとして請求を棄却した。原告の訴えを全面的に退け、沖縄戦民間被害に対する国の賠償責任を認めなかった。原告は控訴する方針。
判決は原告らが沖縄戦で家族を亡くしたり負傷したりするなどの被害を受けたことは認定した。その上で日本軍の戦闘行為などでもたらされた多大な被害が「不法行為」に当たるとする原告の主張について、沖縄戦当時は国家賠償法施行前だったため損害賠償の責任を負わないとする「国家無答責の法理」により退けた。
軍人・軍属や一部民間戦争被害者などに補償がある一方で、民間戦争被害者への補償立法を放置してきたことは「法の下の平等に反する」などとする「立法不作為」の主張については、「(補償立法の制定は)立法府に広範な裁量が認められる」とした。補償に関する軍人・軍属などとの違いについては「不合理な差別とまでは認められない」と判断した。
戦争遂行により民間人を特別な危険状態にさらした「公法上の危険責任」を根拠とする主張に対しては、「実定法上の根拠を有するものとは認められない」として棄却した。
原告37人が沖縄戦を原因とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの外傷性精神障害との診断を受けていることについては、触れなかった。また東京大空襲訴訟の地裁判決などであった、救済を求める民間戦争被害者の心情に理解を示すような言及もなかった。
瑞慶山茂弁護団長は「国の主張を引き写したような、一晩二晩で書ける内容の判決だ。司法責任を放棄している」と強く批判した。