【アメリカ】二人三脚で夢の家 北谷出身 静子・ジェイコブさん


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「夢の家」をバックに写真に収まる静子・ジェイコブさん(右)とデールさん

 静子・ジェイコブさん(北谷町出身、76歳、旧姓上間)は、夫のデールさんのことを、夢を持ち冒険の旅を続ける正義の騎士に例えて「ドン・キホーテ」と呼ぶ。オハイオ州コロンバスで米海軍の救命いかだを製造する造船会社のパートナーとして働いていたデールさんが退職した1980年夏に2人は結婚した。

 DC郊外に住む友人を訪ね、ついでにメリーランド州のチェサピーク湾に浮かぶケント島に寄った。20隻以上のヨットが帆をなびかせる光景に一目ぼれしたデールさん。「この島に家を建てよう!」と目を輝かせて言う夫に、静子さんは心中「ヨットが好きというだけで、建築経験もなく、ましてや失業中の身。財政面でも肉体的にもできるはずがない」と高をくくっていた。
 家計を助けるため働いていた静子さんは、休日を利用して片道8時間の現場までの道のりを1人で往復した。デールさんは島の図書館から建築書を借りて勉強し、地ならしをスタートさせ建設作業を試みるが、1人では遅々として進まず困難極まった。自然の猛威との闘い、さらに運の悪いことに材木を踏み外し骨折して工事は中断。だがデールさんは完治するとまた黙々と作業を続けた。
 翌年やっと電気が通り、静子さんはオハイオ州の家を引き払い島へ移って来た。水は、車で公園に行き水道からポリ容器に給水した。暖房装置は石油ストーブ一つ。そのストーブの上で湯を沸かし、風呂と食器洗いに利用した。静子さんは「トイレは、まだ排水装置がなく汚水の処理に手間がかかることにいら立ち、普通の生活ができないのをうらやむこともしばしばだった」と述懐する。
 長きにわたって完成させた2階建てのこだわりの家。窓枠が大きく日がさんさんと入る明るい吹き抜けのゆったりした間取りは居心地の良い空間を演出している。(鈴木多美子通信員)