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【記者解説】高裁の公益性、判断は 沖縄の基地被害訴え 玉城知事、自治救済を求める 代執行訴訟、即日結審


【記者解説】高裁の公益性、判断は 沖縄の基地被害訴え 玉城知事、自治救済を求める 代執行訴訟、即日結審 代執行訴訟の第1回口頭弁論を終え、記者の取材に応じる玉城デニー知事=30日午後4時10分、県庁(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 金良 孝矢

 名護市辺野古の新基地建設で設計変更申請の承認を巡る代執行訴訟は、福岡高裁那覇支部で第1回口頭弁論が開かれ即日結審した。玉城デニー知事が意見陳述し、県民が示してきた新基地建設反対の民意に即した司法判断を高裁に委ねた。高裁が国と県の公益性のどこに重きを置く判断を示すのか、注目が集まる。

 県に承認するよう国が出した是正の指示を巡る9月の最高裁判決で県敗訴が確定しても玉城知事が承認しないのは、新基地建設に反対する県民の民意が背景にあるからだ。法廷で玉城知事が訴えたのは、県民の民意の公益性や問題解決に向けた対話の必要性など。本土防衛の防波堤として犠牲を強いられた沖縄戦後、米軍基地被害に悩まされてきた歴史をひもとき県民の民意を解説した。

 沖縄の歴史は権利闘争の歴史だ。27年間の米施政権下で人権や自治権が侵害され、それらを保障する日本国憲法の適用を受けるために日本復帰を果たした。だが、その後も基地被害は後を絶たず、沖縄で人権などが保障されているとは言えない状況が続く。県の訴えは、憲法が保障する人権や自治権を守るための主張でもある。

 新基地建設に反対する民意は、これまでの知事選で翁長雄志前知事や玉城知事が当選したこと、2019年の県民投票などで示されてきた。だが国は、県が何度も求めてきた対話による問題解決に応じず、最終手段とされる代執行の手続きを進めてきた。

 司法はこれまで辺野古関連の訴訟で、県の訴えを十分に聞き入れないままの判断を示すなどしてきた。司法に求められるのは国に従属しないための地方自治を守る救済機関としての役目だ。高裁には県民の民意、地方自治の重みが問われている。

 (金良孝矢)