エタノール発電新システム 高いエネルギー効率


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低濃度バイオエタノール燃料の製造装置=宮古島市城辺

 サトウキビ由来のバイオエタノール製造を手掛ける宮古島新産業推進機構(奥島憲二代表理事)は日立製作所(東京、東原敏昭社長)との共同研究で、濃度が低いバイオエタノール燃料でも高いエネルギー効率が得られる発電システムを開発した。通常、エタノール燃料は水分を含むほど燃焼効率が落ちるが、エタノールから水素を取り出して燃焼力の増幅に生かす技術により、エネルギー変換効率45%を達成。ガソリンだけで燃焼させる場合より変換効率を10%高めることに成功した。

 エタノール濃度40%という泡盛並みの度数で利用できるため、無水エタノールのように危険物として取り扱う必要がない。現在は試作段階だが、今後実用化されれば化石燃料の使用を減らす環境対応に加え、管理面からも普及に適した発電システムという。
 同推進機構と日立は「主に自動車燃料に使われてきたバイオエタノールの用途を発電分野へ広げるものだ」と語る。引き続き、燃焼効率のさらなる向上やコスト低減の実証研究を進めていく。
 共同研究は2014年に始まり、宮古島新産業推進機構がバイオエタノール燃料を生産・供給し、日立が発電部分を担当した。
 日立が開発したエンジン技術は、低濃度バイオエタノールを350~450度の高温下で化学反応させ、水素を分離する。この水素をシリンダー内に取り込み、バイオエタノール、ガソリンと混合して燃焼させる。燃焼による爆発エネルギーを動力に変換して発電機を回す。
 従来は水分が燃焼効率の阻害要因とされていたが、このシステムでは水素を取り出す際に水分を使うほか、エンジンの冷却でも水分が使われるため、発電効率を高めるという。
 また、発電機に搭載されるエンジンは発生した熱エネルギーの4割を使わずに排気しているが、今回のシステムは排熱を回収し、水素を発生させるための高温環境に有効活用している。
 キビの廃糖蜜を発酵・蒸留させて製造するバイオエタノールの生産過程では、耐熱・耐塩性が高く、アルコール発酵が早いという特性を持つ酵母「MY17」を使用した。沸点を低くする真空ポンプの採用など蒸留方式も工夫し、エタノール生産に必要なエネルギー使用量も大幅に抑制した。
 奥島代表理事は「エンジン効率を上げるのに、低濃度エタノールを改質して使うのは世界でも初めての試みだ。作られた水素もすぐ燃焼されるので安全性も高い」と語った。
(知念征尚)