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『沖縄密約をあばく』 闇に葬られた真相

『沖縄密約をあばく』沖縄密約情報公開訴訟原告団編 日本評論社・3240円

 沖縄返還時、日米両政府はさまざまな密約を結んだ。その一つが財政密約であり、日本側が米国側に対し巨額の財政負担を引き受けることを秘密裏に約束していた。当時、米軍が軍用地として使用した土地の原状回復費用400万ドルを日本政府が肩代わりすることを示す文書を、毎日新聞記者の西山太吉が入手し、問題提起していた。しかし、国家権力の反撃によって西山は記者生命を絶たれ、真相は闇に葬られた。

 その後90年代になって、財政密約の全貌が米国立公文書館の文書から明らかになったが、日本政府はその存在を否定し続けた。これを受けて、研究者やジャーナリストが、日本政府に対し、密約文書の情報公開を求める裁判を起こした。本書は、この「沖縄密約情報公開訴訟」の経緯や意義について、関係者の論稿をまとめたものである。
 どのような公文書であれ、一定期間が過ぎれば全て公開するという情報公開制度がどれほど整備されているかは、その国の民主主義の成熟度を示す。この訴訟で原告団が問うたのは、まさに民主主義国としての日本であった。訴訟は、原告が一審では勝利したが、二審、最高裁で敗れた。しかし、沖縄返還時に外務省アメリカ局長だった吉野文六が密約にサインしたと裁判で証言したことなど、大きな成果も残した。吉野の「ウソをつく国家はほろぶ」という発言を我々は肝に銘じなければならない。またこの間、研究者やジャーナリストが、地道な調査や取材で沖縄密約の真実に迫った。これらの記録は本書の読みどころの一つである。
 沖縄密約は決して過去の話ではない。沖縄密約は、在日米軍のための「思いやり予算」の源流になったといわれるし、現在、普天間基地の辺野古移設や在沖海兵隊のグアム移転も日本政府の費用で行われようとしている。また安倍政権下では、メディアが権力にどう向き合うかが問われている。本書は、日本、沖縄、米国の関係や日本の民主主義を考える上で重要な文献であり、特にジャーナリスト、研究者、法曹を目指す人々に読んでもらいたい一冊である。(野添文彬・沖縄国際大学准教授)
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 沖縄密約情報公開訴訟 元毎日新聞記者の西山太吉氏らが、沖縄返還をめぐる日米間の密約文書の開示を国に求めた訴訟。2014年に最高裁が原告側上告を棄却し、原告側の敗訴が確定した。

沖縄密約をあばく : 記録|沖縄密約情報公開訴訟

日本評論社
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