【東京】政府が県と約束している2019年2月までの米軍普天間飛行場の運用停止(5年以内運用停止)について、中谷元・防衛相が「定義はない」と明言した。中谷氏は運用停止状態について当初説明していた「飛行機が飛ばないということ」と発言を撤回するなど、「5年以内運用停止」を巡る安倍政権の閣僚発言は度重なる変節で定まらず、揺らぎ続けている。
5年以内運用停止は13年12月、仲井真弘多前知事が沖縄政策協議会で政府に要請した。普天間の名護市辺野古移設に向けた埋め立て申請を仲井真前知事が承認するための事実上の前提4条件の一つだった。政府も安倍晋三首相が「最大限実現するよう努力したい」と受け入れていた。
5年以内の期限については、14年4月の普天間飛行場負担軽減推進作業部会で「19年2月」に決まったが、米政府側が「普天間飛行場は代替施設が運用可能になった段階で閉鎖する」とすぐに否定した。
運用停止の定義は、中谷氏が15年3月の衆院安保委員会で「飛行機が飛ばないということだ」といったんは説明した。だが同年4月24日の同委員会で「幻想を与えるようなことは言うべきでない。撤回する」と述べた。
4月30日には菅義偉官房長官が会見で「普天間にある三つの機能がなくなることが運用停止だ」として、空中給油機能、緊急時着陸機能、オスプレイの運用機能の停止を挙げ、中谷氏の発言を軌道修正した。
ことしに入ってからは菅氏と中谷氏が相次いで、5年以内運用停止は「辺野古移設への協力が前提」などと述べるなど、取り組み停滞の責任を県側に負わせようとする政府の姿勢があらわになっている。
政府は「普天間の危険性除去」を繰り返すが、運用停止の定義がなければ危険性が除去されたかの判断基準も定まらない。運用停止に向けた道筋が見えない中、実現できなかった場合の責任を回避しようとする政府の論理破綻ぶりが一層際立っている。
(仲村良太)