【熊本地震】「ぬちぐすい」復興へ力 沖縄料理店再開


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熱々のサーターアンダギーを差し出す新里さん(右)=13日午後、熊本県熊本市中央区

 【熊本県で真栄城潤一】熊本地震でぐちゃぐちゃになった自慢の店を再開し、復興への第一歩を踏み出した県出身者がいる。「まだ不安は消えないが、明るく前進したい」。震度6強を記録した熊本市中央区で「沖縄料理ぬちぐすい」を営む新里博昭さん(55)=浦添市出身。何とか片付けた店で、温かい沖縄料理を提供する。4月14日の1回目の地震で泡盛の酒瓶などが散乱し、いったんは店を閉めたが、約1週間後に営業を再開。「開店することが復興につながる」。笑い声が戻り始めた店でチャンプルーの鍋を振っている。

 「逃げろ!」。4月14日午後9時26分ごろ、大きな横揺れが店を襲った。ガチャンという大きな音とともに十数本のボトルが割れた。「幸いけがはなかったが、店内はぐちゃぐちゃになった」
 店の片付けをしながら「こんな時に酒を提供してもいいものか」と営業再開について悩んだ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で思いの丈を打ち明けると、普段からよく顔を見せる県出身者の常連客など多くの人から「開店して」「飲みに行くよ」とのコメントが寄せられた。

 常連客の声に背中を押され、店を再開したが、再開当初はまだガスが復旧しておらず、カセットコンロで調理をした。
 「あっという間でもあるし、『まだ1カ月しかたっていないのか』と思うこともある」。少しの揺れでも、震度6強の本震を思い出し、動悸が速くなる。「まだ毎日揺れる。怖い」。整然と片付いた店内とは裏腹に、完全に整理しきれていない不安や恐怖がない交ぜになって去来することも。
 地震後、客の入りは2~3割減ったが、「とにかく今できることをやるしかないさあね」と自身に言い聞かせるように話す。「おいしい沖縄料理は『ぬちぐすい』。お客さんに食べてもらって、元気になってほしい」。新里さんはカウンターに視線を向け、優しくほほ笑んだ。