きょうから本格競技 県高校総体


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 2016年度県高校総体が28日、各地で本格的に始まる。9千人余が27競技で熱戦を繰り広げる。記録更新を懸ける選手や初出場に心躍らせる選手など、それぞれの総体への思いを聞いた。

水面を力強くこぎ進む沖水カヌー部の松本歩咲=27日、糸満市の報得川(又吉康秀撮影)

◆7年ぶりの“紅一点”/沖縄水産カヌー部
 朝夕、糸満市の報得川で練習するのは、沖水カヌー部7年ぶりの女子部員、松本歩咲(1年)だ。約30人の男子部員に交じり、先輩からアドバイスを受けながら力強く水面(みなも)をこぎ進む。4月から競技を始めたばかりだが、28日に出場するカヤックWK1の200、500メートルには「こぎ切りたいし、負けたくない」と強い気持ちで臨む。
 恩納村の仲泊中出身、吹奏楽部でのドラム担当から一転、「ほかの女子がやらないことに挑戦したい」と沖水のカヌー部を選んで進学した。4月からは親元を離れ、幼稚園から小中までずっと一緒だった同級生からも遠く、初の寮生活をする。「自分でいろいろやるのは大変だけど楽しい」
 午前6時から2時間ほど、放課後は午後4時半から2~3時間練習する。運動系の部活は初めてだが、筋トレやランニングにも慣れてきた。3年の前川哲輝主将は「男子の中でも遠慮せず、意地が強くていい。今後上位に食い込むことができる選手で、全国3位以上も狙ってほしい」と期待を込める。松本自身も3年生までの全国大会入賞を目標に掲げ「そのために頑張りたい」と笑顔を輝かせた。(石井恭子)

創部して初めて県高校総体に出場する沖縄カトリック高男子バスケットボール部=23日、沖縄カトリック高校(又吉康秀撮影)

◆6人で挑む“一度きりの総体”/沖縄カトリック男子バスケット
 一度きりの県高校総体となる仲間のためにも「笑顔で1勝」を目標に掲げ、沖縄カトリック高バスケットボール部6人が創部初の総体に挑む。中高一貫校で主将の藤原辰之輔が中学3年の時にバスケ部を創部。進学後の昨年は部員が4人で総体に出場できなかった。1年生2人が加入して念願の総体が迫るが、練習試合を組むこともままならない。実践機会は少ないが個々で工夫を凝らし練習を重ねる姿に、「成長している」と創部時から指導を続ける知念秀憲監督は目を細める。
 2年生のうち2人は本年度中の引退を予定。恩河陽生は「最後なので後輩に残せることは残し、1試合、1本を大事に精いっぱい頑張りたい」と気を引き締め、守備に力を入れるエースの又吉仁光は「ファウルを取られないように気を付ける」と周囲の笑いを誘う。
 司令塔の砂川雅仁は「焦らず冷静にゲームメークし、ここぞで決められるようにしたい」と意気込む。同じ役割を担う弟の陽仁は「落ち着いてプレーし、兄をサポートしたい。声を思い切り出してムードをつくれたらいい」とチームを盛り上げる。チーム一の試合経験がある仲本政亜は「経験を生かし、慎重にプレーして一本一本きっちり決めたい」と静かに闘志を燃やす。
 6人中2人が足にけがを抱えるギリギリの状態だが仲間の一度きりの総体でもある。藤原は「明るいとプレーもうまくいく。どんな展開になろうとも笑顔で楽しむ」と満面の笑みで誓った。(崎原有希)

重量挙げ女子69キロ級に初めて挑む那覇国際の吉武温子

◆1人、黙々と汗 陸上と両立/那覇国際重量挙げ
 4月から競技を始めたばかり、那覇国際1年の吉武温子が県高校総体の重量挙げ69キロ級に初挑戦する。同時に陸上部で投てき(砲丸投げ、円盤投げ、やり投げ)を始め、指導者の翁長真由美の下で唯一のウエイトリフティング部員として日々、体育館の一角で黙々とシャフトを挙げる毎日に「楽しい。もっと経験を積みたい」と意欲的に挑む。
 琉大付属中時代はバスケットボール部でセンターを務めたが、高校では「興味があった」という個人競技を選んだ。本格的に開始して間もない今は、10キロと15キロのシャフトを使って練習する。体育館に入ってすぐの空間を仕切り、1人鏡に向かう姿に他の部活の生徒から「頑張れ」と声が掛かる。
 「イメージと体の一致が大事」。当初は折れたほうきで練習もした。先日初めてスナッチ21キロ、ジャーク31キロを挙げ、日々成長を重ねる。「いつかは自分の体重以上を挙げたい」。近くでは多くの部員を有する球技やダンスなどのにぎやかな部が活動するが、至ってマイペースだ。それでも「1日1回は必ず入部を誘っている友人がいる」と“勧誘活動”も怠らない。
 沖縄工の練習にも参加し、刺激を得る。翁長は「体が柔らかく最初からすぐ構えができた。フォームがいいし、パワーとスピードもあってこの競技に向いている」と太鼓判を押す。
 重量挙げの練習を終えたら、校庭で陸上部の練習へ。「部活と勉強を両立し、全部一生懸命やりたい」
 それら2競技で初出場する県総体には「結果を出すというよりはまだ練習の段階。トップレベルの選手を見て勉強したい」と挑戦する。(石井恭子)

力を合わせて1回戦突破を狙う、沖縄高等特別支援学校のメンバー=27日、沖縄市の県総合運動公園

◆初の団体戦、静かに闘志/沖縄特支男子バド
 「まずは1回戦突破だ」。今年の高校総体バドミントン男子団体戦に初めて、沖縄高等特別支援学校の7人が挑む。メンバーは沖縄高等特別支援学校(本校)の中村清也(3年)と新里海斗(1年)、中部農林高校分教室3年の宮城英武、山城翔、具志堅弘昭、呉屋輝一、そして、南風原高校分教室の長濱颯志(2年)だ。
 同学校としての団体戦出場は昨年の新人大会から。個々でも大会出場経験のあるメンバーだが、ほとんどが1回戦負け。中村だけが昨年の高校総体で2回戦敗退だ。通学先が分かれているため合同練習の機会も少ないが、不安は少ない。
 ダブルスに出場する宮城・山城、具志堅・呉屋らは「いつもミスで相手に点を与えているので、それをなくせば何とかいけるかもしれない」とやる気満々だ。初勝利の喜びを得るため、フットワークとサーブ練習に力を入れてきたという。
 小学校4年にバドミントンを始めた中村は、本校で後輩の指導をしながら練習に励む。分教室と力を合わせた戦いになるが、「いつも通りの自分の試合をするだけ」と落ち着いた様子だ。高校最後の大舞台を前に「1回戦を勝ち、昨年届かなかった2回戦も突破したい」と静かに闘志を燃やしている。(嘉陽拓也)