【アメリカ】85歳祝い サプライズ 「模合」一転パーティー


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85歳のトゥシビーをサプライズで祝ってもらった良枝・シュローダーさん(前列中央)=米国・オハイオ州

 オハイオ州コロンバス在住の良枝・シュローダーさん(名護市屋部出身、旧姓東恩納)は、先月模合に呼ばれ、迎えに来た友人の家に立ち寄りトイレを借りて出てきたところ、居間から突然「サプライズ、おめでとう」の声とともに友人たちが現れた。その中には娘夫婦の顔も。親しい友人らが良枝さん85歳のトゥシビーを祝ってくれたのだった。

 良枝さんは「全く予期せぬことで驚いたがご馳走をいっぱい作ってくれてパーティーをしてくれたみんなの気持ちがうれしかった」と楽しげに話す。いつも笑顔で誰にも優しく元気いっぱいだと慕われる良枝さんは、終戦後電話交換手として軍で働いていた。

 軍属だった夫ポールさんと出会ったのは良枝さんが33歳の時。兄たちはアメリカ人との結婚に反対したが、父親は兄らに「世の中は変わった。親の都合での結婚は時代遅れ。良枝を結婚させないと自分は後悔する」と結婚を許してくれた。

 1966年に結婚。1年後、長男デビットさんが生まれそして、夫の転勤でオハイオ州に越して来た。1年後ポールさんはベトナムに従軍し残された良枝さんと息子は、夫の両親を頼ってニューヨーク州のバファローに移った。

 当時運転ができなかったためスーパーに歩いて行ける所にアパートを借り、時々義父が車を出し助けてもらった。「会話は何とかできたが読み書きができず、光熱費の支払いの小切手が書けず最初は戸惑ったが、どうにかこうにか乗り越えた」と笑う。

 それから1年後夫がベトナムから帰還し再度オハイオ州に転勤となった。一家は家を買い長女アリスさんが生まれた。お菓子作りが得意で手作りのおやつを欠かさなかったという良枝さんは「忙しい夫に代わって自分が子育てを担当した。十分ではない英語での子育ては簡単ではなかったが、息子、娘は健康で学業も頑張ってくれ2人とも高校は学年10番以内で卒業した」と話す。

 デビットさんはオハイオ州立大学を卒業し、今重要なポストに就いている。デビットさんに「スポーツのことは父親から何でも教えてもらった。人生や世の中のことは母親が教えてくれた」と言われたという。親孝行だと評判のアリスさんは勤めていた会社側からの申し出で、大学の学費を出してもらい働きながら学士号を取った。

 良枝さんは「戦時中6年生だった時、熊本に学童疎開し団体生活を強いられた。そのため独立精神が旺盛になった。アメリカでやってこれたのもそのおかげ」と述懐する。

 2年前にポールさんが亡くなり、今は1人暮らしだが、庭でゴーヤーやヘチマなど野菜を育て友人らにお裾分けするのが楽しみという。週末は近くに住む娘一家の家で孫2人に囲まれて過ごしている。

 そして今月12年ぶりに里帰りする良枝さん。故郷で健在の長女(90)、次女(89)、弟(75)との再会を心待ちにしている。
(鈴木多美子通信員)