嘉手納、執念の逆転 8強出そろう 夏の甲子園県大会第8日


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9回無死一塁、同点の本塁に生還し喜びを爆発させる嘉手納の松田幸太(右)=9日、コザしんきんスタジアム(諸見里真利撮影)

 第98回全国高校野球選手権沖縄大会第8日は9日、コザしんきんスタジアムなどで3回戦8試合が行われ、ベスト8が出そろった。嘉手納は2―1で昨夏の甲子園ベスト8の興南に逆転勝ち。那覇商は3―1で第2シードの豊見城を振り切り、宜野座は5―2で第3シードの沖縄尚学を撃破した。これで今大会のシード4校すべてが姿を消した。八重山商工は4―0で宮古を下し、那覇西は4―3で宜野湾にサヨナラ勝ちして初の8強入りを決めた。前原は7―5で那覇に競り勝ち、小禄は8―7で浦添商を破った。美里工は10―2で昭薬付にコールド勝ちした。大会第9日の10日は準々決勝4試合が行われる。

◆嘉手納/堅守 秋の雪辱果たす
 新旧の4番打者の活躍が光った。「打った瞬間うれしすぎて涙が出た」。最終回、嘉手納の大城堅斗は昨年甲子園に出場した興南のエース、比屋根雅也から逆転の一打を放った。投げては「秋に負けた興南にリベンジをしたくてずっと練習していた」というエースの仲地玖礼が守備と一体の打たせて取る好投で完投。サヨナラの危機を防ぎ、秋の雪辱を果たして嘉手納が興南を下した。
 両投手の好投で七回まで0行進が続いた。八回、興南に先制を許すが崩れなかった。0―1の最終回、無死一塁で打席に立った4番打者の知花拓哉。昨年秋、最終回に打席に立ち、併殺され涙をのんだ。雪辱の打席。知花は今夏から大城に代わり4番を任された。「ランナーが出たら返す。堅斗の代わりになるようにする」。狙いを定めた真ん中より低めの直球を捉え、同点となる長打を放った。
 打線は続く。二死一、三塁で大城。「転がさないとチャンスは来ない」と転がすことを意識した。比屋根には内角の厳しいコースを狙われていた。近くに立って詰めさせた後、離れて甘い球にした。外寄りの真っすぐになった球を芯で捉え、たたき付けて決勝点を決めた。
 大蔵宗元監督は勝因を「しっかり守ったところ」とナインを褒めた。

◆“幻の2点”に泣く/浦添商 八回逆転も雨で不成立
 浦添商が“幻の2点”に泣いた。7-8で迎えた八回表に2点を奪って逆転に成功した。しかし直後の小禄の攻撃中に大雨で試合が中断し、そのまま降雨コールドが宣告された。
 規定によって、両チームの攻撃が完了していない八回のイニングすべてが不成立になった。
 試合が成立している七回までの得点で勝敗が決することが決められているため、浦添商は1点ビハインドのまま敗戦となった。試合を観戦した県高野連の関係者も「降雨コールドはよくあるが、このような(得点がなくなる)ケースは見たことがない」と驚きを隠さなかった。
 浦添商の宮良高雅監督は「選手は理解できないはずだし、もちろん納得もできないだろう」とナインの心情をおもんぱかった。それでも粘り強く試合をひっくり返した展開に、「今まで頑張った証しだ。彼らをたたえたい」と言う。
 試合後は降りやまない雨の中、泣き崩れるナインの肩を強く抱きしめた。
 小禄の野原潤一監督は「すっきりしない試合だった」と勝利にも表情は曇ったままだ。「浦添商さんの分まで明日(10日)はしっかりやりたい」と思いを引き継ぐことを誓った。

<きのうの結果>
▽3回戦
【セルスタ】
那覇西 4―3 宜野湾
(延長十三回)
那覇商 3―1 豊見城
小禄 8―7 浦添商
 (七回降雨コールド)

【しんきん】
嘉手納 2―1 興南
前原 7―5 那覇
宜野座 5―2 沖尚

【北谷】
八商工 4―0 宮古
美里工 10―2 昭薬付(七回コールド)

<きょうの試合>
▽準々決勝
【セルスタ】午前10時
八商工―嘉手納
那覇商―小禄
【しんきん】午前10時
前原―那覇西
宜野座―美里工