島尻氏、沖縄県民の不信拭えず 参院選沖縄選挙区


この記事を書いた人 新里 哲
落選が確実となり、敗戦の弁を述べる島尻安伊子氏(手前右)=10日午後8時9分、那覇市松山の選挙事務所

 参院選沖縄選挙区は現職閣僚の島尻安伊子氏に落選の審判が下った。沖縄・北方担当相として振興に取り組む強みや実績をPRした選挙戦だったが、米軍普天間飛行場問題を巡る言動で県民に広がった根強い不信感を払拭(ふっしょく)できなかったことが10万6千票差の結果に表れた。大差での閣僚の落選は、安倍政権にとっても単なる一選挙区での敗北にとどまらない痛手となった。

 島尻氏は昨年10月の内閣改造で沖縄担当相に就任した。当選2回での入閣は異例で、政府が進める辺野古移設を早い段階で容認する立場を表明した島尻氏を閣僚に起用し、沖縄振興で実績を積ませることで参院選での当選につなげたいとする思惑がちらついた。

 昨年12月、2016年度の沖縄関係予算案が前年度比10億円増の3350億円に決まった際には、菅義偉官房長官が「島尻沖縄担当相が全力で交渉した結果だ」とたたえるなど、予算の増額をてこに選挙戦を有利に進めようとする狙いも透けた。

 だが、沖縄担当相就任後も島尻氏に対する不信は広がった。辺野古移設に反対する翁長雄志知事の政治姿勢に関し、沖縄関係予算の確保に「全く影響がないというものではない」と基地問題と沖縄予算をリンクさせる考えを示すなど、言動については身内の自民関係者からも「不用心過ぎる」などの苦言があった。

 島尻氏は選挙戦で普天間問題には街頭などでほとんど言及せず、あくまでも暮らしの向上を争点に位置付ける戦略を取った。赤いエプロン姿で庶民性をアピールし、子どもの貧困対策など現職閣僚としての実績も示したが、これまでの政治姿勢に対する有権者の不信をはねのけるだけの浸透は得られなかった。