先日、生き物に詳しい知人から、山中の川にいるカニは「サワガニ」の仲間だと教えてもらいました。普通の海で見られるカニとどう違うの?調べてみてください。
(宜野湾市 きーむむ)
離島を合わせると、県内にはなんと22種類ものサワガニがいて(本土はわずか3種)、ほぼ全てがその島にしかいない固有種なんですって。
でも、調査員自身は、海のカニとの違いなどの詳細は知りません…。
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この機会に学んでみようと、豊富な知識を頼ったのは、元県立博物館・美術館副館長の千木良芳範さん。今回は「実際に見てみたいです!」とお願いもしてみました。すると「いいよ~」と優しいお返事が。夜間、国頭村内の沢に出かけることになりました。
夜の沢へ
懐中電灯を頼りに、山中の上流部を歩いてみると、まず見つけたのはサカモトサワガニ。水深の浅いところから河原などで見つかるそう。上から見ると丸っこい形がかわいらしいです。人が近づくと水中に逃げる姿も印象的でした。
サカモトサワガニよりも、水から離れた場所で見つかるのはオキナワミナミサワガニ。雑食性で木の実や枯れ葉、ミミズや昆虫、小さなカエルやオタマジャクシ、他のサワガニまで食べるそう。
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オキナワオオサワガニは、名前の通り大きな種類。甲幅が5センチ以上にもなります。沢すじの土手を歩いているところを見つけました。片側のハサミが大きいのがオスです(写真参照)。自然の中で出合うと迫力がありますよ。
実際に生息地に行くと、サワガニたちは種類ごとにある程度棲(す)み分けをしていることがわかりました。沖縄島には、水中に棲むアラモトサワガニ、石灰岩質の山などで見つかるヒメユリサワガニも分布しています。
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母ガニが子育て
サワガニ以外にも、川やその周辺の陸上(陸域)で暮らすカニはいます。これらのカニたちは、普段は陸域に住んでいても、卵を持つ時期は海に移動、波打ち際で大量の幼生を放ちます。卵からかえったばかりのゾエア幼生、続くメガロパ幼生はとても小さく、プランクトンとして海を漂います。脱皮を重ねて成長し、小さな稚ガニになってから上陸します。
一方のサワガニは、母ガニが腹部に大きめの卵を抱いて孵化(ふか)させます。卵からは直接稚ガニが孵化。稚ガニはしばらくの間、母ガニに抱かれて過ごします。子どもを確実に産み、育てる「少数精鋭方式」なのです。一生の中で一度も海に出ないので、島ごとに固有種が進化したと考えられています。
![すらっと長い脚が特徴のヒメユリサワガニ。古い時代の石灰岩質の山や洞窟に生息しています(村山望撮影)](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/06/%E7%B9%9D%E5%81%B5%CE%93%E7%B9%9D%EF%BD%A6%E7%B9%9D%EF%BD%AA%E7%B9%A7%EF%BD%B5%E7%B9%9D%EF%BD%AF%E7%B9%A7%EF%BD%AB%E7%B9%A7%E5%90%B6%E3%83%AB.jpg)
ところで、千木良さんがサワガニに詳しいのは、サワガニと生息域が重なるカエル類を長年研究しているからです。お互いを捕食し合うこともあるカエルとサワガニ。その関係を見ることで、やんばるの生態系全体についても想像が膨らむのだとか。広い視座を持ち、夜の沢でこつこつとデータを集める千木良さんにも驚いた調査員なのでした。
沖縄のサワガニ類については、まだまだ未知の部分が多いのが現状です。「若い研究者の方々を待っています」と千木良さんはメッセージを送ってくれました。
※野生のサワガニを観察したい場合は、自然ガイドなど専門知識のある人との行動をおすすめします
(2024年6月27日 週刊レキオ掲載)
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