【島人の目】EU離れと難民・移民問題


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 英国がEU(ヨーロッパ連合)離脱を決めた直前の世論調査によると、イタリア国民の48%にも上る人々が自国のEU加盟を疑問視する“EU懐疑派”だった。イタリアでEU懐疑派が増大した背景には、地中海から同国に押し寄せる難民・移民問題がある。

 イタリアはEUの十分な支援を受けられないまま海上での難民・移民の救助、また受け入れに孤軍奮闘してきた。そんな折、急増する難民・移民に恐れをなした独仏などEU5カ国が、国境を閉ざして難民・移民の移動を制限した。イタリア国民はEUに見捨てられて難民・移民の過重負担を強いられるのではないかとにわかに不安を募らせた。

 英国がEU離脱を選択した最大の理由も難民・移民問題だった。英国民はEU内のポーランドをはじめとする中東欧域からの特に移民の増大に反発して、EU離脱に賛成票を投じた経緯がある。極右勢力やポピュリスト(大衆迎合主義者)らが、域内での人の移動の自由を認めるEUの政策、つまり「シェンゲン協定」がある限り、英国は移民の流入を阻止できないから離脱するべき、と主張して勝ちを収めたのだ。

 イタリアでEU離脱を声高に叫んでいるのも極右の「北部同盟」である。同じようにフランスの「国民戦線」やオランダの「自由党」、その他の国々の極右政党も反EUを掲げて支持を伸ばしている。移民や難民に生活を脅かされていると感じる民衆の不満は、排外主義を喚呼する極右勢力の格好の付け入りどころだ。

 不寛容に走る欧州の空気は、アメリカの共和党大統領候補のトランプ氏が、極端な排外主義や憎しみをあおって、白人労働者階級の怒りの受け皿となって熱狂を呼んでいる現象とも底流でつながっているように見える。
(仲宗根雅則、TVディレクター)