【甲子園取材班】試合は序盤から劣勢を強いられたが、最後まで一塁側のアルプス席から指笛や歓声が鳴りやむことはなかった。16日に阪神甲子園球場で行われた全国高校野球選手権大会の3回戦。嘉手納は準々決勝への切符は逃したが、友人や父母らの大応援団は選手たちの諦めない姿勢に、「ありがとう」「お疲れさま」と健闘をたたえた。
初戦をほうふつとさせる連打が飛び出した八回には、スタンドはお祭り騒ぎとなった。イメージカラーのえんじ色のメガホンを突き上げたり、カチャーシーを踊ったりしながら「嘉手納まだ行けるぞ」「頑張れ」と声援を送った。
“尼崎応援団”も選手たちの確かな力となった。30年以上にわたり県勢を応援する市立尼崎高校吹奏楽部の顧問で、県出身の羽地靖隆さん(68)は「八回にはチャンスの時に演奏するハイサイおじさんも演奏できた。また春にも来てほしい」と期待した。今大会、33年ぶりの夏の甲子園出場を果たした市立尼崎高校野球部15人も駆け付け、共に声をからした。
主将の大石哲汰一塁手=3年=の母・留美さん(39)は「結果は残念だったけど、一生懸命プレーしていた。見ていてうれしかった」と感慨深げ。攻守で活躍した古謝巧真遊撃手=3年=の父・努さん(51)は「(息子のプレーに)本当に感動した。帰ってきたら『お疲れさま』と言いたい」とねぎらった。
敗戦も「頑張った」 嘉手納高
【嘉手納】嘉手納高校の体育館には16日、大型スクリーンで選手たちを応援しようと約200人の生徒や地域の人が集まり、ナインの活躍を見守った。先制を許し、明徳義塾が得点を重ねると「あぁ」とため息が漏れた。点差が広がった後の九回裏の攻撃、涙を流す選手がスクリーンに映ると「頑張れ」と祈るような声が会場から湧き起こり、涙ぐむ人も。逆転の祈りも届かず、敗退となった。小松聡教頭は「残念だったが、よく頑張ってくれた」と選手たちの活躍をたたえた。
選手らが小学生の時に所属していた少年野球チームの児童らは声をからし、顔を真っ赤にして甲子園に向けて声援を送った。
「絶対勝ってほしいと思って応援した」という嘉手納ライオンズの喜友名利玖君(8)と山内希斗君(9)、濱里拓之慎君(9)の3人は、いつも使うペットボトルの応援グッズを持参し観戦。敗退が決まった時はがっくりと肩を落とした。
また、嘉手納町水釜出身の上里ヤス子さん(94)=沖縄市=は、応援のためデイサービスの職員に付き添われ車いすに乗って同校体育館に足を運んだ。「必勝」の鉢巻きを頭に締め、大きく手を振りひときわ目立って声援を送った。試合は負けたが、選手たちを「ご苦労さん」とねぎらった。