太平洋戦争の報道で新聞記者として国威発揚に加担した反省から、戦後は故郷の秋田県で週刊新聞「たいまつ」を発刊し、反戦を訴え続けたジャーナリストむのたけじ(本名武野武治)さんが21日午前0時20分、老衰のため、さいたま市中央区の自宅で死去した。101歳。葬儀・告別式は未定。しのぶ会の開催が検討されている。
東京外語大卒。戦時中、朝日新聞などで中国や東南アジアの従軍特派員を務めた。「負けた戦争を『勝った』と言い続け、うそばかりを書いていた。けじめをつけたい」と1945年の終戦時に朝日を退社。48年、秋田県横手市で「たいまつ」を創刊し、反戦・平和や農村、教育などをテーマに評論活動に取り組んだ。
78年に休刊後も講演や執筆で発言を続け、沖縄県内でも度々講演し、反戦を訴えた。2007年に那覇市で開催された講演会では「戦争が始まってから反戦を言うのではなく、戦争をやらせないことが大事だ」と強調した。
100歳となった昨年は記者会見で安全保障関連法案や安倍政権を批判。今年5月の憲法記念日、護憲集会に車いすで登壇し「憲法9条は70年間、国民の誰も戦死させず、他国民の誰も戦死させなかった。道は間違っていない」と語ったのが公の場での最後の姿となった。著書に「詞集たいまつ」「たいまつ十六年」など。