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1960年に沖縄を訪問したアイゼンハワー米大統領がオープンカーに乗って帽子を振る姿が表紙を飾っている。当時、小学6年生だった私は、恐らく学校からの動員で泊の1号線に並んで、物々しい警備のMP越しに大統領の姿を垣間見た。
著者は私と同じ戦後3年たって「アメリカ世」で生まれ、大学を卒業するまでずっと27年間の「アメリカ世」で育った世代である。「通貨切り替え」「Aサイン」「パスポート」「強制土地接収」「人民党事件」「コザ反米騒動」「高等弁務官」「毒ガス移送」など、全て身近に体験し、目撃してきたことが28のキーワードでまとめられている。人権がないがしろにされ、理不尽な軍政の下で暮らしていたことが昨日のことのように思い出される。
「アメリカ世を知らない中高生向け」に執筆したのが動機の一つだが、必ずしも中高生にとって平易な読み物というわけではない。が、新聞記者出身らしく文章は簡潔で明瞭である。当時の写真がふんだんに使われ、中高生でも丁寧に読むと、かつての「アメリカ世」の沖縄がどういう時代だったのかイメージしやすく編集されている。
取り上げたキーワードはタイトル通り全て「アメリカ世」に限ったものではなく、「憲法手帳」「不発弾処理・事故」「米兵犯罪と地位協定」など、復帰以後も続く事象についても取り上げている。復帰後44年たっても変わらない沖縄の状況、27年続いた「アメリカ世」が復帰によって終わったとはとても言い難い、という著者の思いが込められているようだ。
今や、人口比で復帰後世代が復帰前世代を超えている。「唐の世から大和の世、大和の世からアメリカ世、ひるまさ変わたるこの沖縄」と民謡に歌われた沖縄の世替わりだが、現在の「アメリカ・大和世」ともいうべき状況の中で、あらためて中高生といわず、復帰後世代やアメリカ世の同時代を生きた人々にも、「記憶」と「記録」を刻む書として手にとってもらいたい著書である。
(大濱聡・元NHKプロデューサー)
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いけま・かずたけ 1948年、平良市(現宮古島市)生まれ。那覇高、琉球大学卒。76年に琉球新報入社。編集局、事業局、販売局を経て中部支社長。2008年定年退職。