【島人の目】友人の創造力に拍手


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 5年前、友が新聞社主催の沖縄文学賞を受賞した。その朗報は、彼女がバージニア州のわが家へ来訪中の夜中2時に知らされ、それから祝杯を挙げた。

 思い起こせば20代のころ、劇団「黒テント」の舞台女優だった彼女の芝居を観劇した。内容が高尚過ぎてついていけず、舞台で機敏に動き、せりふを流暢(りゅうちょう)に話す彼女は、小学校から知っている幼なじみとは思えず遠い世界に飛んでいった感があった。彼女が長年暮らした東京の生活にピリオドを打ち、身内のために沖縄に戻り10年以上にわたる介護をした。

 そしてその体験を基に小説「オムツ党、走る」が生まれた。老人介護施設での老人たちと介護職員たちが織り成す人間模様は、それぞれ登場人物の個性が光りユーモラスにストーリーが展開していくが、さらに沖縄が歩んだ戦争の爪痕と基地問題の現況に触れ、宿命の島で生きる老人たちの生きざまが強烈だ。

 読後は、老後も心意気一つで明るく生きられるのだと心豊かになれる作品である。心が折れていた知り合いは、その小説の感想を「久しぶりに忘れていた笑いが戻った」と語り、ワシントンDC近郊に住む友人は、「80歳を正々堂々迎えられそうで全て自然に委ねたくなった」とメールがきた。

 「オムツ党、走る」の脚本をも手掛け、昨年は舞台化され好評を博した。そしてこのほど東京公演が行われ、東京在の中学の同級生らが駆け付けその中の一人から早速公演大成功を知らせるメールが届いた。

 舞台と客席が一体化したすてきな空間で出演者へのアンコールが何度も続いたよう。多くの人に感動を与えているわが友人の創造力に拍手。「やったね!」
(鈴木多美子、米バージニア通信員)