米軍北部訓練場(沖縄県東村・国頭村)のヘリパッド建設に伴う県外機動隊による警備を巡り、沖縄県公安委員会が派遣要請を決定する前日の7月11日付で、警察庁警備課長が関係都府県警本部長などへ宛て、派遣態勢に万全を期すよう呼び掛ける文書を発出していたことが9月10日分かった。沖縄県警は取材に対し、県外からの派遣要請には警察庁への事前連絡が警察法で定められているとしているが、翁長雄志知事も「過剰警備」と指摘する今回の警備態勢を巡り、知事が任命する県公安委の判断の前に実働部隊間で派遣が事実上指示されていた。公安委の独立性が問われかねない事態が浮き彫りになった。
文書は「沖縄県警察への特別派遣について(通知)」と題し、警察庁警備局警備課長から関係管区警察局広域調整部長、警視庁警備部長、関係府県警察本部長宛てに2016年7月11日付で出された。「沖縄県公安委員会から関係都府県公安委員会あて要請が行われる予定であるが(中略)派遣態勢に誤りなきを期されたい」と県公安委の決定前の通知でありながら、派遣を前提に部隊規模などを明示している。
派遣部隊は、具体的に警視庁と千葉県警、神奈川県警、福岡県警、愛知県警、大阪府警と指示されている。さらに派遣期間と各部隊の人員も指定されているが、公開文書では黒塗りで非開示とされている。
警察庁文書発出の翌日7月12日には沖縄県公安委の援助要請が決定、同日付で各都府県公安委宛てに出された。
沖縄県公安委は3人で構成され、県知事が県議会の同意を得て任命している。事務方は県警職員が務める。7月14日の定例会では、企業と県警の防犯活動覚書締結や、交通安全子供自転車県大会、那覇市内の乳児遺棄事件などが報告されている。
県公安委員会は本紙の取材に対し、県警と警察庁とのやりとりについては、事前調整を定めた警察法60条2項に基づき「県警と警察庁で必要な調整をしているものと承知している」と答えた。
2012年版警察白書では、公安委員会制度の設置理由について「強い執行力を持つ警察行政について、政治的中立性を確保し、運営の独善化を防ぐため」と紹介している。
警察法60条2項は、派遣の要求には「あらかじめ(やむを得ない場合においては、事後に)必要な事項を警察庁に連絡しなければならない」と定めている。